中小企業白書より

定点観測は蓄積するほど流れが理解できるようになります。1年に1度の統計データも毎年見ていけば文脈がわかるというものです。今回は中小企業白書を取り上げます。「2023年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要案」より、中小企業と小規模事業者の動向について、その主要な内容をピックアップして見ていきます。

中小企業の動向

  1. 中小企業・小規模事業者の動向(ページ1、3、33):
    停滞していた状況が徐々に緩和され、緩やかに持ち直してきた。2022年は前年比1.0%増。2022年を通じた動きを見ると、第1四半期はマイナス成長となったが、経済活動の再開等を背景に、第2四半期はプラス成長に転じた。第3四半期は輸入の急増によりマイナス成長となったが内需は堅調であり、足下の2022年第4四半期は前期比0%となっている。
  2. 業種別の消費動向(ページ3):
    2021年は、重点措置が発令されている期間に、消費支出が感染症流行前の水準から大きく減少したが、2022年は財・サービスそれぞれにおいて、前を上回る時期もあるなど、回復の傾向が見られた。その一方で、宿泊や交通においてはいまだ以前の水準には戻っておらず、業種によっては厳しい状況が続いている。
  3. 原材料・資源価格の高騰による企業業績への影響(ページ33):
    原材料・資源価格の高騰により、売上高へのマイナスの影響が2年前と比較して高くなっている傾向にある一方、プラスの影響も高くなっており、原材料・資源価格高騰を追い風に売上高を伸ばしている企業も見られる。一方、経常利益においては、3年間を通じてマイナスの影響が強くなっていることが分かる。

直近の状況

直近では2023年上期に倒産件数が増加。3割増になっています。これは理由がはっきりしています。「22年9月末時点のゼロゼロ融資の実行数は約245万件、実行額は約43兆円」だったのですが、その半数の融資について返済がスタートしたのです。返済がスタートすると経営が成立しない場合は事業を停止します。その結果が数値として出てきている状況です。

中小企業に淘汰の波、23年上期倒産4000件 3割増加

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB066000W3A700C2000000/?n_cid=NMAIL006_20230710_Y

まとめ

景気は持ち直しており、わるくはありません。消費も伸びています。しかし、各企業においては戻る率に差が出ており、マクロの数値ではプラス面だけでなくマイナス面も出現するようになりました。2023年後半はその状況のまま推移するのではないでしょうか。経営としてはその次をそろそろ考えたい時期にきていると感じます。

2023年版「中小企業白書」全文

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/PDF/chusho.html

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆