単なるリサイクルではなく

過去に所有していた製品には、特別な思い出があるものです。手元から離れたモノを再度手に入れ直すこともあるのではないでしょうか。そうなると、製品に思い入れがあるケースもあるのですが、製品から想起される思い出に価値があるのかもしれません。ただ、製品の使用時間、使用期間は短くなっており、製品への思い入れは減少しているように感じます。過去のスマホを見て、思い出が想起されるとはあまり思いません。

物質的な豊かさは、ある意味大量消費であり、浪費の世界です。数多く手に入れられることが豊かさになるからです。しかし、メーカー側も廃棄を前提に大量生産しているケースもあり、問題を抱えています。アパレルでは、廃棄を禁止する規制がEUで導入されようとしています。アパレルは廃棄率が高いので、先にこのような規制が入るのは予想されたことでした。日本も追随することになるかもしれません。

欧州連合(EU)は6日までに、アパレル事業者に売れ残った衣料品や靴の廃棄を禁止する規制を導入することで大筋合意

https://www.sankei.com/article/20231206-SGUAUPVIABKJTE5X53U6IR2UUU/

残すことができる製品ならば

製品を修理するビジネスがあります。一定のシェアでビジネスが成立しています。歴史のあるビジネスのひとつです。修理によって製品の寿命が延びるため、環境にもやさしい選択です。今後、この領域が増えるのかは注目したいところです。

ただ危惧していることは、修理できる製品が少なくなっていること。10年単位、20年単位、さらには50年、100年と利用できる製品群が徐々に減少していることは事実ですし、実感していると思います。購入した製品を修理する体験さえ少なくなっていると思います。故障した場合も、スマホなどは取り替えが基本で修理することはありません。Bluetoothイヤホンの初期不良で店舗に持ち込んだときも、すぐに新品と交換してくれました。修理するより、新品への交換の方が対応が速く、顧客満足度も高くなるのでそのような対応を選んでいると思います。

最先端部品だと

最先端の製品は将来的に修理ができなくなるかもしれないと危惧する人もいます。その理由はいくつかあります。

最新の高度な技術を取り入れた製品は、そのパフォーマンスや機能性においては非常に優れており快適さを毎年のように上げてくれますが、その製品には、高い精度で動作するために微細な部品(半導体など)が組み込まれています。これらの部品は通常、高度な専門知識と特別な機器が必要な状況でしか修理することができません。人の手で交換することはほとんど無理でしょう。できたとしても基板交換になると思います。故障したら終わり、という製品になってしまうでしょう。

持ち続けることがなくなる

このように考えると、最先端の部品を利用している製品は、将来的には修理することが難しいため、10年後や20年後に利用することは想像できません。使わなくなるのが決まっているようなものです。そう考えると単なる道具として接することになるでしょう。ただ、反動で「修理できる」ことが価値になるケースもあります。スマホでも海外製品では「自分でメンテできるスマホ」が販売されています。Fairphoneです。販売した製品のサポート期間は8年間と長めの設定。交換部品の提供をしてくれます。画面破損も自分で修理できるような設計になっています。ただ、普及はしていないようです。

まとめ

今後の製品価値は、長期間利用できる製品であり、価値が下がらない製品となっていきます。電子機器は価値が減少する製品であり、価値が残り続ける可能性は低い。そうなると、歴史ある製品や古い製品の方が価値が残存する可能性が高くなります。このあたりの製品価値の変遷は今後も変容していくので動向を見極めていきたいところです。

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