マテリアル パスポートとは
建築業界においてサステナビリティへの関心が年々高まっていますが、新しい資材管理の取り組みが注目を集めています。そのひとつが、「マテリアル パスポート」(建築家トーマス・ラウ氏考案:オランダ)と呼ばれる資材情報の管理システムです。
マテリアル パスポートとは、建築物に使用される資材の量や性質などの詳細情報を記録し、文書化するシステムのことです。これにより、建築物に使用された資材の種類や数量、品質などの情報が明確になります。今までは建築物の解体時には、使用された資材の情報が十分に活用されないことが多く、資材の再利用や適切な処理が困難でした。マテリアル パスポートは、この課題を解決するために開発されたのです。
流れ
マテリアルパスポートの流れは次のようになっています。
- 建築物に使用される資材の詳細情報(量や性質など)を文書化する
- マテリアル パスポートに記載された資材データを登録・保存するプラットフォームに入力する
- 建築物の金銭的価値算出に利用される(登録された資材のデータや市場価格をもとに、建築物の金銭的価値が算出できる)
- 解体後の資材の再利用が可能になる(パスポートを持った資材は次の建築物で再利用できる)
マテリアル パスポートに記載された資材情報は、「マダスター」というプラットフォームに登録・保存されます。このプラットフォームでは、登録された資材のデータや市場価格をもとに、建築物の金銭的価値が算出することができます。どの部材が使われているのかがわかるので、算出の価値が正確になってくるのです。この効果は大きいのではないでしょうか。建築物は完成後、見えない部分が多いため、価値の算出が不明瞭な部分があったからです。
再利用も可能に
建築物が解体される際、マテリアル パスポートを持った資材は、次の建築物へと旅立つことができます。解体された資材は、パスポートに記載された情報をもとに、適切に分別・処理され、新しい建築物で再利用されます。いつ、どこで製造されたのかがわかり、どのように利用されたのかもわかるので、再利用に不安が生じません。これが実現できれば、資材の価値が維持され、廃棄物の削減と資源の効率的な利用が実現するでしょう。
まとめ
マテリアルパスポートの取り組みは、実現すれば建築業界におけるサステナビリティの実現に大きく貢献するでしょう。資材のライフサイクル管理を改善することで、資源の効率的な利用と廃棄物の削減が可能だからです。また、建築物の金銭的価値の算出は、不動産市場の透明性を高めていきます。日本は中古の建物の価値が諸外国に比べ思いっきり低く、価値が維持できません。マテリアルパスポートのような仕組みが日本でも実現できれば大きく前進すると感じます。
マテリアル パスポートとは
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80109360Y4A410C2TCR000/
使用される資材の量や性質などの詳細を文書化し、「マダスター」というプラットフォームに登録・保存する。登録された資材のデータや市場価格をもとに、建築物の金銭的価値が算出される仕組みのこと
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