インフレ税とは

インフレ税とは、インフレーションによって生じる実質的な税負担のことを指します。インフレが進行すると、お金の購買力が低下し、同じ金額でも以前より少ない商品やサービスしか買えなくなります。つまり、個人や企業が保有する現金や預金の実質価値が目減りすることで、政府はインフレ分だけ実質的に国民から富を移動することになるのです。これにより政府債務が減少する事象です。

戦後にあった

歴史を振り返れば、 第二次世界大戦後の日本は大きな債務がありました。しかし、急激なインフレによってその債務は消滅したのです。意図的ではありませんでしたが、実際には債務がインフレによって解消したのです。この内容については論文が出ています。 こうした事実があったことだけは覚えておいたほうがいいでしょう。

負担は

インフレは少なからず負担がかかってきます。生活においても企業経営においても負担になってきます。高インフレ下では、影響が大きくなります。たとえば、年間のインフレ率が10%の場合、1000万円の現金や預金の実質価値は1年で900万円に減少します。この減った分がどこに行ってしまうのか。借入をしている側は返済の負担率が減少するのです。そう考えると、借入がある側にとってインフレは目に見えない収益として解釈できます。都合の良い資金調達手段となりえます。

試算すると

では、インフレどのような影響を与えるのでしょうか。年率3%のインフレが30年間続くと仮定すると、貨幣価値は約半分になると言われています。これは、30年後の物価水準が現在の約2.43倍になり、貨幣価値は現在の約41%になるという計算に基づいています。1000万円は410万円まで減少すると考えてください。

ただし、この計算には前提条件があることに注意が必要です。インフレ率が常に一定であることを前提としています。実際の金利は上下を繰り返すので、このような試算通りにはなりません。

誘惑になる

このように長期的なインフレが政府債務の実質的な価値を大きく減少させる可能性があることは確かです。これは、インフレが高い場合、政府にとって債務を返済することが相対的に容易になることを意味します。そのため、政府はインフレを通じて実質的に債務を減らすことで、債務問題への対処を図ろうとする誘惑に駆られる可能性があるでしょう。しかし、インフレ税に頼ることは、長期的には経済に悪影響を及ぼす可能性が高い。高インフレは、経済の不安定化の問題を引き起こしかねません。

言葉が頻出し始めた

インフレ税という言葉が飛び交うようになりました。これも、インフレに対し負担と感じる人が増えているからでしょう。今回の内容をまとめると下記になります。

1)インフレ税とは

  • インフレーションによる実質的な税負担
  • お金の購買力低下と富の移行

2)インフレ税と政府債務の関係

  • 長期的なインフレによる実質債務の減少

3)インフレ税の長期的な悪影響

  • 経済の不安定化が発生する
  • 政府の財政規律の弱体化と赤字拡大のリスク

まとめ

インフレ税とは、インフレによる実質的な税負担と解釈されています。しかも長期的なインフレは政府債務を減らすが、経済に悪影響を及ぼします。債務の肩代わりと解釈されてもおかしくありません。ただ、インフレは金利によって利息も増えるので、プラス面を強調されていくでしょう。インフレの負担は相殺されて少しプラスになるというデータも出てきています。このあたりは繊細な部分なので注意深く見ていきたいと思います。

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