米国経済の変化

米国経済の変化に注目しています。今月に入り、小売、飲食、ファーストフード業界の兆候が出てきました。マイナス兆候が報道されるようになったのです。たとえば次のような変化が報道されています。

  • レッドロブスター:破綻
  • 99センツ・オンリー:破綻
  • ダラーツリー:1000店舗一斉閉鎖
  • マクドナルド:5ドルメニュー投入(セットは17ドル 2,500円超)
  • ウォルマート:5ドル以下のPB投入、
  • ウォルマート:高級食材好調(富裕層が降りてきている)

乖離(かいり)し始めた

インフレによる価格転嫁が消費者の購買力と乖離(かいり)し始めたことで、影響が出ているのです。これらの変化は、インフレによる価格上昇が消費者の購買力を圧迫し、低価格帯の商品やサービスへのシフトが起きていることを示唆しています。一方で、ウォルマートでは高級食材が好調であり、富裕層もウォルマートに通い始めたのが兆候になります。ウォルマートは、売上現状維持ですが、収益は向上しています。降りてきた富裕層向けの食品などで収益を確保しているのが目立ちました。

インフレ抑制の影響

インフレを抑制するために、FRBは金利を引き上げ、景気を冷ますように仕向けてきました。この政策は意図した通りに機能し、小売、飲食、ファーストフード業界では消費が冷え込んでいます。インフレ抑制のためにはこうした措置は避けられませんが、今後は金利を下げるタイミングに入ることが予想されます。

歴史的に見ても、金利引き下げのタイミングで不況が広がることが示されています。インフレは沈静化するものの、経済全体が縮小する時期に突入するのです。今回も、金利引き下げが今年になるか来年になるかの違いはあるものの、不況サイクルに入る可能性は高まっています。大統領選挙までは経済を維持すると思われますが、その後はわかりません。

他を見て

今回は米国の事例を取り上げていますが、1年後2年後には日本でも発生可能性はないとは言えません。値上げが続いた場合、最後には購買力が維持できなくなるケースが出てくるかもしれないのです。

企業は、こうした消費者の購買行動の変化を的確にとらえ、商品やサービスの価格設定を調整することになります。表現すると簡単ですが価格設定に答えがないので迷うでしょう。今回、米国レッドロブスターが破綻したのも「食べ放題」プランの失敗が原因だったのではないかと推測されています。売上の落ち込みを食べ放題プランで挽回しようとしたら、余計赤字が増えてしまったのです。

ポイントは

今回の内容を箇条書きにしておきます。

1)米国経済の変化

  • 小売、飲食、ファーストフード業界で価格転嫁と消費者の購買力の乖離が発生
  • 企業の破綻、店舗閉鎖、低価格メニューの導入など新事象が出てきている

2)各企業の取り組み

  • レッドロブスター、99センツ・オンリー: 破綻
  • ダラーツリー: 1000店舗一斉閉鎖
  • マクドナルド: 5ドルメニュー投入(セットは17ドル)
  • ウォルマート: 5ドル以下のPB投入、高級食材好調(富裕層の変化)

3)インフレ抑制のため金利上昇させたが

  • 景気冷却効果はあった
  • 小売、飲食、ファーストフード業界での消費冷え込みが企業経営にマイナス影響

4)今後の金利引き下げ時期には

  • 金利引き下げのタイミングが来る(今年または来年に発生)
  • 不況サイクルに入る可能性が高まる

まとめ

日本の金利も11年ぶりに1.0%を超えてきました。ゆっくりではありますが、上昇しています。今後も上昇は止まらないと予測しています。日本の特徴としては、時間をかけて金利上昇をさせている点です。インフレ率も今のところ大きくないので、金利を急いで上げる必要はありません。ただ、インフレは完全にコントロールできないので、急激な物価高騰が発生すれば金利も急上昇するでしょう。他の先進国が行った事例を見ればそれがわかります。5月はセル・イン・メイ(Sell in May)でしたので眼が離せない展開でした。

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