各国の思惑が交錯

現在、世界経済は不確実性が高まる中、先進国各国の思惑が交錯し、駆け引きが激しくなっています。特に注目すべきは、中国が米国債を売却していることです。これは、中国国内の事情が臨界点に近づいていることを示唆しているのかもしれません。失業率の増加は耳にします。上海の日本系企業に勤めていた方が国内地方の日本企業へ応募しているのを耳にしたこともあります。地元採用を考えていた企業の方が驚いていましたが、オンラインで応募してくるそうです。

米国は、中国に米国債を売却されたことで、頼れる国は日本ぐらいしかないという状況に陥っています。日本の他には、英国が米国を陰で支えている状況があるくらいです。中国が売却した米国債を英国が買い支えている現状もあります。英国の米国債保有が増加傾向にあるからです。米国経済を支えなければならない、という合意形成が米国、日本、英国でされているのではないでしょうか。

為替について

為替はいくつかの要因によって決まってきますが、計算上の値があります。ドル円の場合、ドルと日本円の量によって導き出される為替は1ドル120円前後になります。現状はそれより大幅に円安になっています。

米国イエレン財務長官は「介入はまれであるべきだ」と為替介入をある意味否定しましたが、これは米国債を売却された状態でドル安円高になれば、米国の状況が厳しくなることを懸念しているためでしょう。物価高騰が止まらなくなるからです。物価高騰を冷ましたいのが米国の事情です。そのためにはドル安円高は避けたいのです。

一方、日本銀行も為替に関してはダンマリを決め込んでおり、金利上昇については明言していません。ただし、少しずつ日本国債の買い入れ額を減らしながら調整しています。その結果、日本国債買い入れの減額による金利アップが生じており、金利は1.0%を超える水準まで上昇しました。これは11年ぶりの高水準です。金利を上昇させることで為替相場を円高に誘導する手法を選択していると思われます。

金利1%を超えるとさすがにメディアも金利アップによる影響を報道します。住宅ローンの金利アップについて記事が増えてきました。固定金利のフラット35の借入金利推移を見てもアップの状況がわかります。借入期間21年以上の場合、
・2021年9月:1.28%
・2024年5月:1.83%
と上昇しているのがわかります。

状況は

各国の現状をまとめると以下のようになります。

◆中国:
・米国債を売却(保有が減少)
・国内事情が臨界点に近づいている可能性もあるのではないか

◆米国:
・中国に米国債を売却され、日本や英国に頼らざるを得ない状況
・ドル安円高になれば状況が厳しくなることを懸念(物価高騰が続くため)

◆日本:
・為替に関してはダンマリ、金利上昇についてはほとんど明言せず
・日本国債の買い入れ額を徐々に減らし調整を進めている(円高へ誘導)
・金利は1.0%を超え、11年ぶりの高水準

◆英国:
・中国が売却した米国債を買い支えている
・米国債保有が増加傾向にある

まとめ

世界経済の動向を取り上げる機会が増えています。日本の経済動向より世界経済の方が不確実性が高いのが原因です。状況を見ることで小さな兆候が発見できるかもしれません。想定されるシナリオは複数あるので誰も当てることはできませんが、小さな兆候からシナリオを絞ることは可能だと考えています。今後も目が離せません。

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