利上げ決定

日本銀行が政策金利を0.25%程度に引き上げました。決定の前夜にニュースとしてリークされているのは、最近では、いつものことです。事前に結果がわかっている状態でした。この決定に関して、日銀総裁は記者会見があり内容を確認したのですが、ちょっと気になっているところがあったので、取り上げます。次の発言内容についてです。

「賃金上昇が続くという見通しの中での利上げの判断になっていくし、変動型の住宅ローンについては、いわゆる5年ルールのようなものがあって、金利自体は上がっても利払い額は5年間据え置かれるというものが多いと認識している」

「5年間で賃金が先にあがっていて、そのあと、利払い額が上がるということになるので、その負担がかなり大きく軽減されると認識している」

この説明は一見もっともらしく聞こえますが、実際にはいくつかの重要な懸念点があると考えています。

影響は単純ではない

政策金利が上昇すると住宅ローンの変動金利型に影響が出ます。単純に返済額が上昇します。ただ、変動型住宅ローンは返済金額が5年間変わらない「5年ルール」があります。そのため、金利が上昇してもすぐに返済額は増えない。その数年の間に賃金上昇が続く見通しなので、返済額がアップしても吸収できるでしょう、という論調なのです。しかし、本当にそれだけでしょうか。懸念点をあげてみます。

  1. 返済期間の長期化
    金利が上がると、毎月の返済額のうち利息分が増えるため、元金の返済が遅れます。同じ返済金額の場合、元金の減少が緩やかになります。これにより、当初の返済期限までに完済できない可能性が出てきます。予定の額を完済しても残金が残る可能性があるのです
  2. 将来の不確実性
    5年後の賃金上昇を前提としていますが、経済状況は予測不可能。賃金が期待通りに上昇しない場合はどうするのでしょうか。不確定要素を発言されるのは不誠実に感じます

より包括的に

金融政策の影響は複雑で広範囲に及ぶため、単純化した説明だけでは不十分。借り手の不安を消すための発言内容だと感じていますが、それにしても前提条件が一面的であり、本当にそうなる確実性は高くないと感じました。今までにも何度もこの話題は取り上げていますが、将来のリスクを軽視する論調が気になるのです。

まとめ

住宅ローンの中には、5年ルールがない金融機関もあります。その場合は、すぐに影響が出る可能性も高い。借り換えが進行するかもしれません。おそらく、どこかの時点でパニック的な行動による借り換えが起こるのではないかと思っています。そうならないのが良いのですが、描いているシナリオが好条件が重なったときにしか成立しないと考えているのです。心配過ぎるかもしれませんが、シナリオはベストなシナリオだけでなくワーストなシナリオも想定しておくのが普通です。

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