氾濫している

急速な技術革新と情報の氾濫している環境下で、個人の能力を決定する「スキル」の習得に関して気になっていることがあります。それが「スキル習得スピードの二極化」です。今回その点について取り上げたいと思います。

明確さの違いがある

資格取得の世界では、必要な勉強時間や習得すべき知識の範囲が比較的明確です。たとえば、

  • 宅地建物取引士:約300〜500時間の学習
  • 公認会計士:約2000〜3000時間の学習

といったように、一般的な合格までの学習時間が明示されています。このように、資格取得には「ゴール」が明確に設定されています。そのため、進捗がわかりやすい。途中の達成感も感じやすいのが特徴です。

曖昧さ

一方、一般的な仕事スキルの習得プロセスは、資格取得ほど明確ではありません。はっきりしないのです。新人さんが入ってきても、どれくらいの時間でスキルが習得するのかわからない。現場任せであり、人任せです。その点をまとめると以下の通り。

1)習得に必要な時間が不明確

  • 「・・・・のスキルを身につけるのに何時間必要か」という質問に、明確な答えを出すのは困難、出そうとしない
  • 個人の適性、事前知識、学習環境などによって大きく異なると言い張る

2)「合格ライン」が曖昧

  • 資格試験のような明確な合否基準がない場合があり不明瞭
  • 「十分なスキルが身についた」と判断する基準は、個人や組織によって解釈で決めている

3)スキルの多様性と変化の速さ

  • 業界や職種によって必要なスキルが大きくちがう
  • 技術の進歩により、求められるスキルが急速に変化しているがキャッチアップできない

これらの要因により、仕事のスキル習得には曖昧さが漂っているのが現状です。

習得アプローチの変遷

かつての日本企業では、新入社員教育に多大な時間と労力を投じることが一般的でした。研修だけでなく、現場配属になっても、仕事が終わった後に毎日1時間かけて教えてくれる先輩もいた時代があったのです。わたしも経験していますが、個別でスキルの課題について丁寧に教えてくれたので貴重なスキルが身につきました。時間もかけて教えてくれたのです。今振り返れば、感謝しかありません。

現在の状況

最近の職場環境は、大きく変化しています。残業時間や休日増加により、就業時間内で直接教える(教えられる)時間が減っています。そのため、単にスキル習得の時間数も減少しています。大幅に減っていると個人的には感じています。

習得の二極化現象

これらの環境変化により、スキル習得のスピードに大きな差が生まれています。個人の意思に任される部分が増えたので、差ができるのです。すぐに習得する人もいれば、数年経っても習得できない人の差が大きくなっているように感じています。

どうするのか

スキル習得の二極化は、個人の問題として終わりにすることはできません。組織にとっても影響があり、大きな課題です。組織は以下のような対応ができると考えています。

1)学習・習得する文化の醸成

  • 継続的な学習が当たり前な雰囲気を醸成
  • 学びに対する姿勢を称賛する企業文化の構築

2)スキル可視化システムの導入

  • スタッフ1人ずつのスキルマップ作成
  • 組織全体のスキルギャップを把握する(必要なスキル人材の明確化)

3)インセンティブ制度の設定

  • スキル向上にともなう評価を明確化
  • 自己啓発に対する金銭的支援を行う、基準をつくる

4)テクノロジーの活用

  • AIなどを活用しスキル習得の時間を短縮

まとめ

スキル習得のスピードの二極化は課題であると同時に、個人にとっては大きなチャンス。この現象を理解し、適切に対応することで、スピードアップできるのではないと思います。意識するのは、習得の速い人を知っておくことだと思います。最も速い人を知っている人ほど、だんだんと習得スピードも上がると思います。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆