見えにくい

「リーダーが自主的に動かない」「必要最低限の仕事しかしない」「何かを言えば逃げる姿勢をとってくる」という悩みを耳にします。これらの現象の背景には、「消極的利己主義」という目に見えない問題が潜んでいると考えています。この消極的利己主義という言葉は適した表現だと思うので取り上げてみます。

消極的利己主義とは、単なる消極性や受け身の姿勢ではありません。「自分の利益を守るために、あえて何もしない」という意識的な選択なのです。たとえば、困っている状況があっても、自分のことを優先して何もしない。または、いつもと同じことしかできないと主張したりします。わかると思いますが、このような積み重ねは、組織全体の活力を低下させ、停滞へと導いていってしまいます。

事例から見える

以前、ある製造業の経営者から相談を受けた事例が、この問題を端的に表しています。その会社では、品質管理担当のスタッフが、明らかな製造工程の問題を把握していながら、指摘することで自分に負担がかかることを避けるため、問題を放置していました。本人曰く、「解決しようとはしていた」と報告がありましたが、何もしない時間がかなり過ぎていたのです。結果として、製品の不具合が増加、大きな損失が出てしまいました。

文化との関連性

このような消極的利己主義が発生する背景には、組織文化特有の「減点主義」が深く関係しているのではないでしょうか。何かをして失敗すれば減点される一方で、何もしなければ評価は下がらない。何もしなければマイナス点がつかないのです。このような評価体系ならば、「動かないことが最も安全」という意識になるのは当然です。歴史ある組織ほど、このような減点主義になっているのを感じます。

取るべき対応

では、経営として、この問題にどう向き合えばよいのでしょうか。考えてみると、消極的利己主義に対処するためには、以下の点を押さえておきたいと感じます。

  • 個人の問題ではなく組織システムの問題として考える(個人に反省させてもあまり意味はない)
  • 心理的安全性の確保を最優先課題とする(Secure Base)
  • 評価制度の見直しをしながら減点主義から脱する
  • リダー自身が率先して行動変容を示す(まずは1人から)
  • 長期的な視点で粘り強く取り組む

まとめ

消極的利己主義が発生すると組織の重要な課題のひとつになります。リーダーの中に消極的利己主義の人がいると停滞を招きます。積極的利己主義のリーダーがいた場合は逆に「暴走」します。このようにリーダーは利己主義では責務を果たせません。「利他」をベースに思考プロセスを構築するほうがいいでしょう。そうなると、消極的利他主義、積極的利他主義の方向になると思います。こうやって種類分けで比較すると、どの人がどこに当てはまるのかがわかってきます。社内を振り返って、4つのタイプに分けてみるのもいいかもしれません。

積極的利他主義積極的利己主義
消極的利他主義積極的利己主義

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