「変化は必要だ」「イノベーションが重要だ」と、頭では分かっているのに、いざ実行となるとフリーズしてしまう。この経験、誰にでもあるのではないでしょうか。リーダーの中にも、スタッフに向けて、新しいことにチャレンジすべき、と言っているのだが、スタッフが新規の提案をしてくると、なぜか否定するリーダーもいます。そこには理由があったのです。科学的な理由があるのです。心理学では、この現象を「反新奇バイアス」と呼んでいます。

反新奇バイアスとは

心理学者のジェニファー・ミューラーによると、『人間には無意識のうちに未知の体験や見知らぬ情報に対して嫌悪感を抱く傾向がある』といいます。これが反新奇バイアスです。言葉とは裏腹に心の中では嫌悪感が出てしまうのです。あくまでも意図的ではなく自然な形で出てくる感情のひとつです。脳は、新しい発想や行動に含まれる「不確実性」を本能的に回避しようとするからです。新しい試みが社会から拒絶されることへの不安も、このバイアスを強める要因となっています。本能的な失敗回避と考えていいでしょう。

現場での実例

企業での意思決定においても意外に多く見られる現象です。成績が好調な部署において「常に新しいチャレンジを」と掲げるリーダーが、実際には、斬新な提案が上がってくると難色を示すのです。このような矛盾した行動を目にしたことはありませんか。これは反新奇バイアスの典型的な現れといえます。

克服には

このバイアスが厄介なのは、理性では「変化は必要」と理解していても、感情がついていかないという点です。言葉と感情が裏腹なのです。本人でも気がつかないときもあるくらいです。以下のような要因も重なり、より顕著になりやすい傾向があります:

  • 失敗を極端に忌避する性質
  • 前例主義への依存
  • 集団での同調圧力
  • 現場の好調な状態を維持したい気持ち

好調な業績を出している部署にも発生するので厄介さは残ります。

フィードバック

反新奇バイアスは、誰もが持っている自然な心理メカニズム。それを「悪いもの」として否定するのではなく、上手く付き合っていくことです。本人が気がつかないケースは周りがフィードバックすべきでしょう。最初は受け入れられないと思いますので、事実を伝えてあげることからスタートです。

まとめ

変化を受け入れる能力は、少しずつ磨くスキル。まずは自分の中にある「新しいものへの抵抗感」に気づくところから始めてみてもいいでしょう。抵抗があることを認めれば先に進めます。ここがリーダーの判断基準が試される部分です。表面的だけでなく、本心から同じことを思えるようにしたいところです。

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