地銀における国債含み損

地方銀行の国債含み損が2兆円規模に拡大しているという記事が出ています。金利が上昇すると金融機関は貸出金利が上がり、その部分の収益は増えます。しかし、過去から保有していた債券は損が発生しているのです。たとえば1%の債券を保有していたが、金利が2%になってしまった。そうなると新しく発行される債券の金利も上がります。たとえば、金利2%の債券が発行されるようになると、保有している1%の債券は新しい債券に比べて得られる金額が少ないのです。将来価値が下がる現象です。下がった分が含み損になるのです。地銀に体力があれば売却をする方法もありますが、損が出てしまうので決断のタイミングは金融機関によってちがいます。保有し続ける決断をした場合、金利が上昇し続けるタイミングでは含み損は大きくなっていくのです。

地銀、国債など含み損2兆円に拡大 堅調収益下の懸念に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB137WC0T10C25A2000000/

プラスとマイナス部分

貸出しなどの収益部分が含み損を上回る場合は問題ありませんが、含み損の方が大きくなると金融機関の経営に影響が出てきます。その一例が農林中央金庫です。債券の運用で1兆円を超える多額な損を出しました。そのため全国のJAが資金を提供し農林中央金庫の資本金を増強したのです。債券運用については、この資料がわかりやすいと思います。外債を保有していたのですが、欧米の金利上昇にともなって損が出たのです。もともと安定的な運用を目指しており、債券への投資は「安全で収益が予測しやすい」ものでした。それが不安定な状況下で損失を出す要因になってしまったのです。

農林中金の投融資・資産運用に関する有識者検証会
https://www.maff.go.jp/j/study/nouchu_kensyo.html

まとめ

安定的で予測しやすいはずの債券投資が逆に大きな損失になっている現実。安定的というのは、現状維持を前提にしているように感じます。現状維持が続けば安定的な予測通りになるのですが、世の中は変化していきます。変化するほど「安定」から「不安定」へ移行します。予測された収益が逆にマイナスになることもあるのです。農林中央金庫はマイナスになっている逆ざや資産を売却することを決定し、赤字決算になります。地銀はまだはっきりしておらず、そこまで表面化されていません。今後、表面化したときに大きくメディアに取り上げられることでしょう。

(下記動画は上記文章をAIで読み上げさせています。人の動きもAIが自動生成しており撮影はしておりません↓)

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