AI の職業上の影響の測定

Microsoft Bing Copilot(現在のMicrosoft Copilot)の匿名化された20万件の会話データを分析した内容が公開されています。AIとどのように協働し、どのような活動が成功し、その影響がどの職業に及ぶかを明らかにした内容です。今回はその内容を取り上げます。

利用実態から紐解く影響

分析の結果、ユーザーがAIに支援を求める最も一般的な作業活動は、
・情報収集
・文章作成
であることがわかりました。

一方、AI自体が行う活動としては、情報の提供や支援、文章作成、教育、助言になります。また、AIは、単にタスクを自動化するだけでなく、人間をサポートする役割、例えばコーチ、アドバイザー、教師として機能している結果もこの内容には含まれています。方向性が見えて来たのです。

生成AIと職業の進化

AI適用可能性スコアから見る職業の影響度

この研究では、AIの職業への潜在的な影響を測定するために「AI適用可能性スコア」という独自の指標を用いて算出。AI適用可能性スコアが最も高い職業の上位には、
・通訳者・翻訳者
・歴史家
・サービス販売員
・作家
・顧客サービス担当者
など、知識労働やコミュニケーションに重点を置く職種が多数ランクインしています 。

これらの職業は、
・情報収集
・文章作成
・顧客とのコミュニケーション
といったAIが得意とする活動が中心であるため、高い影響度があるのです。

一方で、
・採血技師
・看護助手
・現場労働者
・機械操作
・監視を伴う職業
など、物理的な作業や直接的な対人ケアを必要とする職種は、AI適用可能性スコアが低い結果となっています。AIでは代替できない仕事ということになります。

まとめ

AIの活用範囲が明確になって来ました。現時点でのAIの能力から見て、得意分野が決定されつつあるのを感じます。こうした方向性を知っておくと、利用する領域を間違うことがなくなるでしょう。得意とする分野から活用していけば結果も出やすくなるのです。

Working with AI: Measuring the Occupational Implications of Generative AI
https://arxiv.org/abs/2507.07935

  • AI の急速な導入により、経済への影響を理解することは社会的に極めて重要な課題
  • 本研究では、Microsoft Bing Copilot との20万件の匿名化・プライバシー保護済み会話データを分析し、人々がAIに依頼する主な業務活動を特定
  • 人々がAIに依頼する主な活動:情報収集、執筆
  • AIが自ら実行している主な活動:情報・支援提供、執筆、指導、アドバイス
  • これらの活動分類と、タスクの成功度・普及度を組み合わせて「AI適用スコア」を算出
  • AI適用スコアが最も高い職業群:ナレッジワーク(コンピューター、数学など)、オフィス・管理サポート、営業
    → これらの職業は「情報の提供・伝達」が中心的タスク。
  • AI適用スコアは、賃金・教育水準と相関関係があることが判明
  • 成功裏に実行されたタスクの種類、賃金・教育レベル、実際の利用状況とAI影響予測の一致度を分析
  • 実世界の使用状況とAIの職業への影響予測を比較し、実用的・予測的結果の一致を検証
  • 結果として、AIは情報伝達が中心の職業に最も大きな影響を及ぼす可能性があると示唆

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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011