技術的な問題はわかりやすい

通常、ビジネスの課題は技術的問題で解決できます。スキルや技術が備われば解決する問題です。解決方法も見えていますし、課題も見つけやすい。技術が足りなければ習得するだけですし、そこに時間がかかったとしても解決は見えています。解決に向けて取り組んでいれば、時間とともにゴールにたどり着く問題解決です。

しかし、技術的な内容だけで解決しないことも発生するのが経営の現場です。技術的にはクリアしているにもかかわらず問題が解決しない。先送りにされる現象です。これもよくあることです。では、この技術的には解決されない問題について今回は考えてみます。

適応を要する課題とは

技術的に問題が解決されない課題のことを、「適応を要する課題」と提唱した人がいます。ロナルド・ハイフェッツ氏です。これは、「人々の優先順位、信念、習慣、忠誠心を変えなければ解決できない複雑で困難な問題」のこと。専門的な知識や既存の技術では解決できず、対象者自身が価値観や行動を変化させ、困難な対話を乗り越えることで解決を目指す必要がある課題のことです。

簡単に言ってしまえば、「納得しなければ行動しない人がいる」課題です。そのような人、見かけたことがあると思います。技術的な問題はないことも、なぜか納得しない。動こうともしない。中には反対する人もいる。また、昔からのやり方を変えたくない人もここに入ります。日本だけでなく、海外でも同じ現象があるのでエリア特有のものではないことがわかっています。

新しいリーダーにとって、最初はこの状態が普通なのかもしれません。納得しなければ人は動かないのです。これを、対話や説明、提案によって解決に導くことがリーダーシップといえるでしょう。

適応課題へのアプローチ

適応を要する課題に対して、アプローチを考える前に、リーダーがその課題に向き合っているかが問題です。過去に見てきた中で、正面から向き合う人の方が少ない。何となく、やり過ごし、時間が解決してくれると思っている人もいるからです。

たまたま時間が解決するケースもないわけではありませんが、そのリーダーには解決能力があるとはいえず、再現性がありません。本当にたまたまだったと感じるときもあります。

では、向き合って話をするときのポイントは、
・話をする回数
・説得ではなく相手の納得
を中心に考えると、だんだんとアプローチ法がわかってくると思います。注意すべきは、1回でなんとかしようとは思わないこと。長時間かけて1度で相手を変えようとするのは、ここではやめておいた方がいいと思います。相手に対して苦手意識があると、回数を減らして解決する方法を選択しがちですが、失敗率が高いので避けたいところです。

まとめ

リーダーの力は、適応を要する課題を解決できる能力によって差が開いていると思います。粘り強く何度も会話を試みる人が適応課題を解決に導いていると感じています。そのようなリーダーは決して説明が上手なわけではありません。どちらかといえば、上手な説得ができないから、相手の納得を導き出せるタイプなのかもしれません。

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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011