成人発達理論とは

こどもの発達は発達理論で分析されています。成長が著しいので、発達理論が存在しているのがわかります。身体の成長もあれば、知識的な成長もあり、すべてが成長のプロセスをたどっていきます。

その一方、大人はどうでしょう。発達という言葉で表現されることは少ない。しかし、成人の発達理論は存在しています。たとえば、ロバート・キーガン氏が提唱した成人発達理論は、この分野の代表的な考え方です。「大人になっても成長を続ける」という内容です。今回はその中から、「知性の3段階」を取り上げます。次のような内容で発達していくのです。

1)環境順応型知性:周囲の期待や規範に合わせ、社会的な役割を果たすことに重点を置く段階
2)自己主導型知性:自分自身の価値観や目標に基づき、主体的に行動する段階
3)自己変容型知性:既存の枠にとらわれず、自己のあり方自体を問い直し、変容させていく段階

指示に従う「環境順応型知性」

最初の段階は「環境順応型知性」です。この段階にある人は、周囲の期待や組織のルール、指示に従うことを重視します。自分の明確な価値観や意見がまだ確立されておらず、周囲に合わせることで安心感を得る傾向があります。多くの大人がこの段階に位置するとされています。もちろん、これは悪いことではありません。社会のルールを学び、他者と協調しながら生きていく上で、この知性は不可欠なもの。ただ、この段階にとどまっていると、変化の激しい現代で自律的な意思決定をすることは難しくなります。

自分の軸を持つ「自己主導型知性」

次の段階は、「自己主導型知性」。ここでは、他者や環境に流されることなく、自分自身の価値観や判断基準を確立します。「自分はこうしたい」「自分はこう考える」といった明確な軸を持って行動できるようになります。仕事でもプライベートでも、自分の信念に基づいて意思決定をし、結果に責任を持つことができるようになる段階です。この段階に到達すると、より複雑な問題解決やリーダーシップを発揮することが可能。しかし、時には自分の価値観が絶対だと考え、他者との摩擦を生むこともあるので注意が必要です。

既存の枠を超える「自己変容型知性」

第3の段階は「自己変容型知性」です。この段階に達すると、人は自己のあり方そのものを深く問い直し、変容させていくことができます。自己主導型知性が「自分の軸を持つこと」を重視するのに対し、自己変容型知性は「その軸自体を客観視すること」ができるのです。

たとえば、「自分はこうあるべきだ」という信念や価値観が、いつ、どこで形成されたものなのかをメタ認知的にとらえ、その信念が今の自分にとって本当に適切なのかを問い直します。ある程度、客観的に見て判断できると解釈できます。

まとめ

成人発達理論は、人生を通じていかに成長できるかを教えてくれます。可能性を示唆する内容です。そのため、この3段階を知っておいて損はないでしょう。このような段階で自分が成長してきたのか、または成長途中なのか振り返ることも大切な時間です。

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