「自己連続性の喪失」とは

「M&Aを経て、自分が信じてきた会社の理念が失われた。ここはもう、わたしの会社じゃない…」
「昇進してマネージャーになった途端、以前のように現場で輝いていた自分が“他人”のように感じる…」
「自分の専門スキルがAIに代替され始め、これまで築いてきたキャリアが砂上の楼閣に思える…」
キャリアを重ねる中で、ふとこんな「断絶感」に襲われたことはありませんか。これは単なるスランプ、燃え尽き症候群とは少しちがう、もっと根源的な感覚かもしれません。ビジネス環境における「自己連続性の喪失(Loss of Self-Continuity)」と呼んでいる状態です。今回はこの自己連続性の喪失について取り上げます。

「自己連続性」から考えると

まず「ビジネスにおける自己連続性」を考えてみます。自己連続性とは、たとえば「自身のキャリアに対する一貫した感覚」を持っている状態です。過去、現在、とつながっている感覚です。

これらの過去・現在・未来が一本の線で結ばれていることで、プロフェッショナルとしての自信と目的意識を保つことができます。しかし、このキャリアのストーリーが断ち切られたとき、「自己連続性の喪失」が起こるのです。断絶は、不可抗力で発生したり、環境変化によって発生します。

失われる主な原因

ビジネスシーンでは、この断絶感を生む要因がかなり潜んでいます。具体的に考えていきます。

1. 急激な役割・職務の変化
昇進によるマネジメントへの移行、専門職から未経験部署への異動など、求められるスキルや役割が180度変わると、「以前の有能だった自分」とのギャップに苦しみ、アイデンティティが揺らぐことがあります

2. 会社の大きな変革(M&A・事業再編)
企業文化やビジョンが大きく変わると、「自分が信じてきた価値観」や「帰属意識」を失います。会社というステージの登場人物だったはずが、いつの間にか全くちがう舞台に立たされているような感覚に陥ります

3. 評価やスキルの陳腐化
テクノロジーの進化や市場の変化により、長年かけて培ってきた専門スキルが突然価値を失うことがあります。「自分の強みだと思っていたものが、もはや強みではない」という現実は、自信を根底から覆します

まとめ

ビジネスにおける「自己連続性の喪失」は、個人の弱さではなく、変化の激しい時代における自然な反応です。個人の責任ではありません。また、それはキャリアの終わりを意味するわけではありません。むしろ、これまでの時間を一度見つめ直し、新しい章を書き始めるための重要な「転換点」ととらえることができます。時間がかかるかもしれませんが、新しい意味づけを考える方向転換だと考えてください。

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