「不毛な消耗戦」

「また競合が値下げをしてきた・・・追随するしかないのか・・・こんども・・・」
営業の現場で、こんなため息をついた経験はありませんか。ライバル企業と不毛な価格競争に陥り、お互いに利益が削られ、疲弊していく。だれも得をしていないはずなのに、どの会社もそのチキンレースから降りられない。

なぜ、こんな非合理的なことが起きてしまうのでしょうか。

実はこの現象、経済学の「ゲーム理論」、特に「ナッシュ均衡」という概念でスッキリと説明できます。今回は、なぜ「望まない消耗戦」に陥ってしまうのか、そして、そこから抜け出して「高価格(高利益)」を維持するための論理的な戦略について考えていきます。

なぜ「値下げ合戦」は起きてしまうのか

この「やめたくても、やめられない」状態こそが、ナッシュ均衡の一種です。ナッシュ均衡とは、「どのプレイヤーも、自分だけ戦略を変えても得をしない(むしろ損をする)ため、現状の戦略を維持し続ける安定状態(均衡状態)」を指します。値下げをやめたら売上が下がるので、現状の戦略を維持し続ける状態。

たとえば「もし相手が急に値下げしたら、自分たちも即座に値下げ(報復)し、あの『均衡』の状態に戻す」ことをしています。売上は以前と同じシェアに落ち着きます。ただし、利益はお互い減らしていくことになります。

以前、軽自動車メーカーがシェア争いをしていたときに、販売台数至上主義になっていました。これも同じ構造です。販売台数を増やそうとするメーカーに対して、もう一方も同じように台数を増やしていくのです。

しかし、市場には限りがあるので、最終的には破綻します。現在、軽自動車メーカーは以前のようなシェア争いはしていないように見えます。競争がなくなったとは思いませんが、ある一定のシェアを保つような新しい均衡に変化したと解釈できます。値引きではなく、高価格帯で均衡を保つシェア争いへと変化したのです。不毛な値引き合戦から、違うステージへ移動した事例といえるでしょう。

まとめ

今後は、このような不毛な値引きは減るのではないでしょうか。業界によって温度差はあると思いますが、市場が限定されていたり、市場が縮小する時期には、新しい均衡が生まれると感じています。あなたの業界はどのような均衡状態になっていますか。

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