動学的不整合性とは
経済学の範疇に「動学的不整合性(Dynamic Inconsistency)」という考え方があります。これは、
・最初はベストと思われる政策が、実際に実施されるにつれて、最適ではなくなる現象
のことを指しています。初期は、「とてもいい施策」と期待されているものが、実行されるにつれて「思っていたものとちがう」という結果になることです。これは、ノーベル経済学賞を受賞されたプレスコット氏、キドランド氏が提唱した概念です。
これを、今回はビジネスに当てはめて考えてみたいと思います。企業のリーダーに当てはめて考えると現象として想像がつくのではないでしょうか。就任直後は「方向性も期待できる」内容であったのに、時間の経過とともに「最適な内容ではない」状態に陥ることです。
なぜ、このようなことになるのでしょうか。リーダーが信頼(信用)を失い、達成を逃してしまうメカニズムを鋭く説明しています。
望まない結果を
動学的不整合性は、簡単に言えば、
・「約束する時の最適な計画」
が時間の経過とともにズレてしまう問題です。途中で当初最適計画が破綻してしまうことです。具体的には、下記のような事例になります。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| 計画時(事前) | スタッフに最大限の行動をうながすため、甘い約束や有利な条件を提示することが最適と考えていた |
| 実行時(事後) | 約束通りに実行すると ・コストが高すぎる ・短期的な利益を逃してしまう ことから、約束を破る方がその時点で最適になり、方向を転換 |
| 結果 | スタッフから見ると 「急変した」「逆転した」 と感じる。そのため 「どうせ裏切られる」 と思うようになる。そこまでいくと、当初から協力を控える行動に出る。結果、だれも望まない非効率な均衡(誰も得をしない状況)に陥る |
まとめ
初期はベストな計画であっても、途中で破綻してしまう動学的不整合性は、ビジネス領域において発生することがあり、防ぎたい内容です。そのためにも、場当たり的な解決策を初期段階で提示することは止めておきたい。単なるメンバーの不満を解消するような解決策を選択してしまい、その後施策を続けることができないことは避けたいところ。ビジネスでは、結果につながることを優先とし、目先のことはその次に考えることだと感じます。
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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆
