データから見える事実

企業のスタッフ育成やキャリアパスの戦略として広く用いられている「ジョブローテーション」。スタッフに多様な経験を積ませ、組織全体の知識レベルを向上させることを目的としていますが、実際のところ、ローテーションは本当にパフォーマンス向上につながるのでしょうか。単に異動を繰り返すだけで意味がないようにも感じます。その領域について考えてみます。

論文から

2016年に発表されたよる論文「ジョブローテーションと従業員のパフォーマンス 、金融サービス業界における縦断的研究からの証拠」は、この疑問にデータに基づいた明確な答えを提供しています。

ローパフォーマーよりハイパフォーマー

論文の骨子は次のとおり。

『ローパフォーマーほど異動しやすい』
・最もパフォーマンスが低い20%の従業員が、最もローテーション確率が高い
・「タレント育成」を目的としたハイパフォーマーのローテーションよりも、ミスマッチの回避やモチベーション向上を目的としたローテーションが、より一般的な動機となっている

『恩恵を受けるのはハイパフォーマー』
・ローテーションによるパフォーマンス向上の効果は、ローテーション前にハイパフォーマーであった人
・ハイパフォーマーは、ローテーション後2年で、留まった同僚よりも平均で約10%高いボーナスを受け取っている
・ローパフォーマーにはパフォーマンスに有意な改善は見られない
・ローパフォーマーは新しい職務特有の知識やスキルを習得するのに時間がかかるため、その効果が打ち消されている可能性がある

現実はこう

この論文で述べていることは「ローパフォーマーが異動するが、恩恵を受けるのはハイパフォーマー」という現実です。矛盾したことになっているのです。実際に必要なのはハイパフォーマーの異動。しかしよく行われているのはローパフォーマーの異動。考えてみればそうですが仕事ができるスタッフを異動させたくないリーダーも多いのでそうなるのでしょう。

まとめ

異動に関しては、結果論でしかありません。何をやればうまくいくのか、実際にはわからない領域です。ただハイパフォーマーを新しいビジネスに異動させるという会社もあり、その点はこの論文の骨子が正しい部分もあると言えるのではないでしょうか。

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