特殊な事情

日本は特殊です。日本の国債の発行高が多いからです。他の先進国と比較しても、ずば抜けて国債の発行量が多いのです。これには理由があります。他の先進国は法律で国債の発行を毎回制限しており、簡単に増やすことができません。上限を設けているのです。日本にも国債の発行についてはルールがあるのですが、実質運用されていない状態です。

たとえば「特例公債法案」。これは、財政法で原則として禁止されている「赤字国債」の発行を、特別に認めるための法律案のことです。特例という名称がついているので、その特殊性がわかるかと思います。この法案を5年ごとに通しており、実質制限のない国債の発行をしているような状態です。

特例な法案

国は、自ら定めたルール(財政法)で禁じていることを、「特例」として行っている事実は知っておくべきでしょう。そもそも、なぜ禁止しているかを理解しておかなければ、特例措置が良いのかわるいのかの判断もできません。

国が赤字国債を原則禁止とされている背景には、次のような理由があります。

・増税なき借金は痛みを麻痺させ、安易な支出拡大につながりやすい
・悪性インフレ(ハイパーインフレ)を防ぐために禁止

これが基本です。政府が安易に借金に頼り支出を拡大すれば、通貨の価値が暴落し、生活が破壊されるリスクがあります。海外から見たら脆弱通貨になってしまうのです。

ハイパーインフレの可能性

莫大な借金を抱えながら、日本でハイパーインフレが起きていないのは、国債の多くを国内で消化できていることや、世界有数の対外純資産を持つことなど、特殊な事情があるからとされています。

しかし、理論的には、財政ファイナンス(中央銀行による事実上の借金引き受け)に近い状態が続いており、リスクはゼロではありません。海外からの判断によってマイナス環境に陥ることも想定しておかなければならないでしょう。

まとめ

今後、金利が上昇して利払い費が急増したり、円への信認が失われて激しい円安(キャピタルフライト)が進んだりすれば、制御不能なインフレが起きる可能性は否定できないと感じます。そうならないことを希望しますが、まわりの判断、海外からの評価によって決まる領域も大きいので、こればかりはコントロールできる部分とできない部分に分かれます。国債金利の上昇や為替の動きを見ると海外の評価は高くないと感じています。

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