技術伝承

製造現場における最大の課題のひとつは、技術の伝承です。かつては「ベテランの背中を見て覚える」というOJTが機能していましたが、熟練工の高齢化と減少により、その前提が崩れつつあります。そのせいか、現場での不具合も多いような気がします。

技術の伝承がされていない場合、新しい工場を立ち上げる際や、地方拠点において、指導役となるベテランが不在になってしまいます。これは、致命的なボトルネック。こうした状況下で、現場改善のあり方を根本から変えようとしているのが、作業分析AIソフトです。

ほぼ自動で分析

これまでの作業分析といえば、ストップウォッチ片手に現場に立ち、時間を計測し、ビデオをコマ送りしてエクセルに入力するといった、膨大な手間のかかる作業でした。しかし、最新のAIツールは、撮影した作業動画を解析し、作業工程を自動で要素分解します。ホントに楽になっています。

動画から、「部品を取りに行く」「セットする」「加工する」「検品する」といった一連の動作が自動的に区切られ、それぞれの所要時間が算出されるのです。

「暗黙知」を「形式知」

技術の伝承は
・「暗黙知」を「形式知」へ
と言われています。実際にデータ化して伝承すると8割から9割は分析できるようです。しかし、1割から2割は伝承できないのも事実。その点は認識しておきましょう。

可視化

動画による分析では、「全体的になんとなく遅い」といった曖昧な指導ではなく、「部品のセット工程で、ベテランに比べて平均1.5秒遅れている」という事実(ファクト)に基づいたフィードバックが可能。動画を同時に再生すれば一目瞭然でしょう。これまでは感覚でしか伝えられなかった「コツ」や「カン」の部分が、具体的な数値と映像として可視化できるのです。

まとめ

技術の伝承もさることながら、若手教育にいても有効なのが、動画→デジタル化(分析)→マニュアル化でしょう。AIの有効性は分析というより、教えることができる功績が大きい。そこに気がつく企業は、若手でも活躍できるでしょう。このように新しいツールを使いこなすとき、飛躍を求めるのではなく、現状のプロセスを快適にする方向から進めて、実装しましょう。飛躍を求めすぎると完成せず、現場に実装できない状態が続いてしまいます。現場で使えるところから実践することがポイントです。

スズキ、作業分析AI「Ollo Factory」を国内工場に導入し生産技術継承と品質統一を推進
https://iotnews.jp/digital-transformation/269435/

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