記憶の変容

「過去と現在と未来は一つである」という哲学的な定義はありますが、通常はこれらを別々のものとして感じています。特に、経験してきた過去と現在の関係性は、デジタル時代の進展とともに変化しており、その点を把握しておくのは損ではありません。今回は、過去と現在の関係性、そして記憶という観点から、どのように変わってきているのかを探ります。

記憶との新しい関係

過去は、思い出せる範囲内で記憶に存在します。しかし、写真などの記録媒体を通じて、自然に思い出せない内容も再び想起されることがあります。そのためか、写真で残すことの価値が見直されています。過去の瞬間を保存することができる。保存コストもほとんどかからなくなった。そのため、無限に保存することができる。だから、すべてを保存したいという欲求も出てくるのです。経験も記憶ではなく、記録として残されるように変わりつつあります。

共有と伝達の時代

最近、「共有する文化」の時代だと感じます。貴重な瞬間を人と共有したい、伝えたいという欲求が強くなっています。かつては「目に焼きつけておく」ことが重視されましたが、今はそれを記録し、共有することにより、経験をより豊かなものに変えています。自分の記憶に残すより、他人に伝え共有する方が優先されることもよくある光景になってきました。たとえば、夏の花火もリアルに見て感動することより、きれいに録画できることの方が重要になっているのではないでしょうか。単なる感動より、記録に残し、共有する価値の方が高くなっているということでしょう。

記憶力の変化と進歩

デジタル技術の進歩により、記憶力が以前よりも低下していると感じます。過去の瞬間をデジタルデバイスに保存することで、自分自身の記憶にはあまり頼らなくなっているからです。一方で、この技術は新たな進歩をもたらし、情報を効率的に管理し、アクセスする能力を高めています。個人のデータベースをつくることは生活の一部になっていくのでしょう。仕事だけでなく人生もアーカイブされるようになるのです。

まとめ

過去、現在、未来の分離と記憶の変容は、デジタル時代の進化の一部。過去を保存し、現在を共有し、未来に対して新たなアプローチを取るようになりました。この変化は、記憶方法だけでなく、日常生活や仕事のあり方にも影響を与えています。デジタル化による進歩と後退のバランスを見極めながら、この新しい現実に適応していきたいと思います。

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