最前線

ビジネスの世界で、データ分析やマーケティング戦略の重要性が提唱される中、しばしば見落とされがちな貴重な資産があります。それは、日々顧客と直接接しているスタッフです。営業職であったり、電話を受ける人たちであったり、顧客を直接打ち合わせをする担当だったりします。最も価値ある顧客情報を持っている方々であり、企業にとっては「価値発生源」なのです。その点が理解されていないケースもあり、企業の成長を左右しているのではないかと感じることもあります。はやくその価値に気がついて発展してほしいと思うこともあります。

一次情報

顧客と直接対話するスタッフは、フィルターされていない生の顧客の声を聞いています。顧客の反応を見ることができるのです。言葉に出ていない情報も表情や身振りから判断することもできます。ため息が出た、といった情報も貴重なのです。アンケートやデータ分析ではとらえきれない、顧客の感情や微妙なニュアンスを含む貴重な情報源。この領域の情報を集められる企業は強いでしょう。

市場動向の早期発見

日々の顧客とのやり取りを通じて、市場の変化や新たなニーズを他のだれよりも早く察知できる可能性があります。競合他社の動きについても、顧客から直接情報を得ることができ市場の方向性を推測することもできるのではないでしょうか。このリアルタイムの洞察は、企業の戦略立案に極めて有用です。逆に、リアルタイムの情報がない戦略は方向性をまちがえる可能性も出てくるのです。

スカイマークの元社長の談話を思い出しました。現場からの情報、意見が正確に上がって来なくなり最後失敗した、というようなことをコメントしていたと思います。大きな決断も現場の情報がなければ精度が下がるのです。

改善の源泉

顧客の具体的な不満や要望を直接聞くことで、製品やサービスの改善に直結する情報を得られます。さらに、顧客との何気ない会話から、顧客自身も気づいていない潜在的なニーズを見出すこともあります。メーカーの中には、プロトタイプを直接顧客のところに持っていき、「他に機能は必要ですか」「いくらなら売れますか」「何個ぐらい売れますか」と事前に聞いてしまうところもあります。そこまで聞けば売れないはずはありません。一定の数は販売できるので、初期ロットが売れ残る確率は少なくなります。

情報活用

意外に重要視されていないのが、顧客と電話応対するスタッフが持っている情報です。カスタマーサポート、営業事務、アフターサービスは情報の宝庫です。営業担当の報告には加工が入ることがありますが、他の部署の報告は濁りがないので、定期的に確認するようにしています。そうすることで、製品改良、サービス改良へとつながるのです。

情報の体系化

情報の体系化は20年前から提唱されていますが実現には遠いようです。情報を蓄積する→まとめる→体系化するという流れですが、目の前の業務に追われると進まない領域です。ただ、今後は、AI利用により情報の体系化が進むことになります。スタンドアローンのPCで動作するAIが進化するので、社内の大量な情報を整理することは可能になると思っておいてください。

反映

トップマネジメントが定期的に現場の声を直接聞く機会を設けることで、より実態に即した戦略立案が可能になるはずです。顧客接点からの情報を経営判断に反映させることで、市場変化に柔軟に対応できる体制を築くことができます。あるスマホメーカーの創業者は定期的にアフターサービス部門に行き、直接顧客と接していたようです。気まぐれな行動なのか、意図的な行動なのかはっきりしませんが、直接得る情報の価値を感じていたのではないでしょうか。

まとめ

顧客と直接接するスタッフは、単なる業務遂行者ではありません。会社にとって最も貴重な情報源の所有者なのです。「現場の一次情報」の重要性を認識すればするほど、効果的に活用する仕組みを構築するようになるでしょう。真の顧客中心経営を実現するカギとなるはずです。

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