円もフラジャイルなのか
ウォール街の市場関係者の間で、日本円が「フラジャイル(fragile)」になっているという指摘が出ています。「フラジャイル」とは、脆弱で不安定な状態を意味します。脆弱な通貨ではないか、と認識され始めているのです。そんな認識は日本ではないのではないでしょうか。これは、相対的な判断であり、あくまでも外から見たらそのように見えるということ。国内だけを見れば、そんな感じには見えないのです。
かつては安全資産の代表格とされてきた円が、なぜこのような評価を受けるようになったのでしょうか。今回は、円の現状と「フラジャイル通貨」の概念について深掘りしていきます。
「フラジャイル通貨」とは
金融業界では、「フラジャイル通貨」という言葉が使われることがあります。これは、特に下落リスクの高い通貨を指します。2013年、米国の金融大手モルガン・スタンレーが、次の5つをフラジャイル通貨として発表。ブラジルレアル、インドルピー、インドネシアルピア、トルコリラ、南アフリカランドを「フラジャイル5」と名付けました。これらの通貨は、高インフレや経常赤字といった経済構造上の問題を抱え、通貨下落が進みやすいという特徴があったのです。
最近の円の為替相場はいきなり大きく動きます。動く幅が大きくなっているのが特徴です。1日で数円の円高、円安が頻繁に発生しています。安定している通貨は急激な上下が発生しません。円も安定していた通貨だったのですが、それも昔のことのようになっているのです。
背景にある要因
では、日本円はなぜ「フラジャイル」と見なされるようになったのでしょうか。もっともらしい根拠はいくつかありますが、日銀黒田総裁時代に「日銀保有の国債残高590兆円」まで肥大させてのが大きな要因でしょう。約5倍まで肥大しました。国内では日銀保有の国債残高上昇による影響は今のところ出ていませんが、国外から見れば円の価値が下がることは避けられません。為替はお互いの国の通貨の量によって決まるのが基本なので、通貨の量が増えれば相対的に価値は下がります。その影響が徐々に出てきたのが、「フラジャイル通貨」というレッテルではないでしょうか。
今後
日本円の「フラジャイル」な状況は一時的なものなのか、それとも構造的な問題なのか。今後の展開を左右する要因としてポイントになります。
- 金融政策の転換
日本銀行の政策変更が円の安定化につながる可能性がありますが、日銀は出口戦略が少なくなっており、可能性が低くなっています。選択肢が減っている状況だと認識しておいた方がいいでしょう - 国際情勢の変化
世界経済や地政学的状況の変化が円の価値に影響を与える可能性があります。地政学リスクは高くなっており、目が離せません。11月を越えれば見通しが決まってくると思います
まとめ
日本円は現在、今までにない変動性を見せており、市場の懸念が発生し始めました。円が「フラジャイル」と評価される現状は、他人評価としていったん受け止めておくべきでしょう。日本円は大丈夫という考えは「まさか」のときに困ります。円が弱くなれば円安が止まらなくなります。そのときに何ができるのかを今からシミュレーションしておきたいところです。日本の上場会社でもある業界は急に海外進出をするようになりました。これも日本円の状況を見て判断していると思われます。
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