戦略変える
人口減少社会において、製品戦略は転換期を迎えています。従来の大量生産・大量販売モデルはまだ成立していますが、売上減少は避けられない様子になってきました。それがデータで見えています。企業はより付加価値の高い製品やサービスの提供へとシフトを進めています。ただ、付加価値といっても、簡単に実現できるわけでもありません。今回は、付加価値のヒントになる項目について考えてみたいと思います。
市場構造変化
人口減少に伴い、大量生産品の販売数量が減少する中、企業は収益性を維持するために単価の向上を模索しています。しかし、既存の大量生産品では簡単な値上げが難しく、実現できません。消費者から見れば、その通りなのですが、同じ製品を今までより高く購入するには理由が欲しいのです。理由がなければ、ダウングレードして他の製品を買ったり、買い控えをするだけなのです。そこでオーダーメイドやカスタマイズ製品をラインナップに加えることで単価アップを実現するプロセスを考えてみます。まず、オーダーメイド製品は以下のような利点があります。
- より高い価格設定が可能
- 顧客との強い関係性構築(接点が多く、長時間)
- 在庫リスクの低減(ムダがない)
- 製品の差別化が容易(消費者から見てわかりやすい)
紳士服業界
この変化を最も顕著に示している例が、ビジネススーツ市場です。従来の既製服からセミオーダースーツへの移行が急速に進んでいます。背景には、オフィスカジュアル化による総需要の減少や、既製服の価格競争による利益率低下と販売数量の減少があります。そこで移行する手段に出ているのです。
セミオーダースーツは、完全オーダーメイドと既製服の中間に位置し、顧客のニーズと企業の効率性をうまく両立させています。大手チェーン店でもセミオーダー展開を強化しています。単価アップも実現しており、販売数量は減っていても収益確保を実現できています。
自動車産業
自動車業界でも同様の傾向が見られますし、今後は、カスタマイズ、オーダーメイドの領域へ手を出すと予想しています。従来に比べオプション選択の幅が大きく広がり、実質的なカスタマイズ製品としての性格を強めているからです。これは単なる仕様選択の拡大ではなく、「自分だけの一台」を求める消費者ニーズへの対応と言えるのではないでしょうか。他の人と違うクルマを手に入れたいという欲求は以前からありましたが、費用がかかり手間もかかる領域でした。これがディーラーオプションで簡単に実現できるようになっています。
インフレ時代における
この「パーソナライズ化」の流れは、単なる一時的なトレンドではなく、人口減少社会における構造的な変化として注目しています。業界によっては、回帰現象といえるでしょう。そのため、
- デジタル技術を活用したカスタマイズ可能な生産体制の構築(多品種個別生産)
- 顧客データの活用による価値提案の高度化(顧客データの確保が優先)
といったポイントは欠かすことができないと思います。
おわりに
インフレ下における価格戦略は悩ましいところです。早急に対策をしなければなりません。価格を上げられる製品や業界であれば問題ないのですが、既存製品をそのまま値上げしたら購入してくれない状態になるのが予測できるのであれば、今から考えておくことだと感じます。いずれ、値上げのポイントはまとめていくつもりです。
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