辞退率7割って
2025年度採用の小学校教諭について、合格通知を出した280人のうち、7割を超える204人が辞退したという話題があがっていました。高知県の話です。高知県教育委員会は、採用予定数は130人のところ、280人に合格を通知→辞退204人→採用76人のみ、となったのです。54名の不足が生じています。この大量辞退を受けて、教育委員会は13人に追加合格を出し、さらに12月には40人程度の2次募集を行う予定とのことです。ここまで辞退者が多いと異常のように見えてきます。
「難関職種」だった
この状況に違和感を覚える人もいると思います。というのも、30年前の教員採用試験は公務員試験の中でも特に難関とされ、倍率は高かったからです。「教師になりたい」という夢を持って教育学部に進学しても、厳しい採用試験の壁に阻まれ、希望のエリアで教職になれなかった人もいました。それが今や、合格しても7割が辞退するという状況です。この劇的な変化は、教職を取り巻く環境の大きな変容を示していると感じます。
起きている現象
では、なぜこれほど多くの合格者が辞退するのでしょうか。主な理由として考えられるのは
- 複数の中から選んだ結果の辞退
です。複数の就職先が決まっているならば、条件や環境の良い就職先を選びます。そのとき、教職は
・ハードな仕事
・長時間労働
・モンスターペアレントへの対応
といった環境なので、辞退することになるのでしょう。
魅力はなぜ失われたのか
この30年間で、教職の魅力が大きく損なわれた要因はいくつか考えられます。
まず、教育現場の仕事が著しく複雑化しました。以前は「教える」ことが主な仕事でしたが、今ではご家族への対応の工数が増加しています。細かいことを投げかけてくるご家族も増えており、対応するとエネルギーが消耗するほどだそうです。
また、社会のデジタル化により、教える側の準備も変わってきています。ツールの変化により教えるコンテンツ量も増えていくでしょう。外から見ているより、多大な準備が必要なのです。準備はどこまでやっても完璧にはなりません。そのため時間がかかってしまうのです。
ワークライフバランス
複数の内定をもらっている学生が「ワークライフバランスを考えて選んだ方がいいのか」と質問してきたことがあります。どのように選んでいいいのか、選択基準に迷っていたのです。複数の内定、複数の就職先が決まっている場合、まずは条件面で比較をするでしょう。その後は、実際の仕事内容や職場の雰囲気を調べるのではないでしょうか。
まとめ
この状況を改善するためには、単なる採用試験の合格者数を増やすだけでは不十分。条件面や仕事内容の変更が必要になってくるでしょう。また、企業の採用活動と同じように採用のための情報公開が求められると思います。魅力ある仕事に見えない限り辞退率は減らないと考えています。
小学校教諭7割強が辞退 採用試験合格者280人中204人 高知県教委
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/799733
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