予想するとき

将来予想は誰もが関心がある分野です。シナリオを描く作業になります。たとえば、景気がどうなるかは、いくつものストーリーが展開されています。あるファンドは投資家に対して、100通りのシナリオを提供しているのを聞いたことがあります。たとえば、日本の景気動向の予想の場合、日本が破綻、日本円が破綻した場合も予想シナリオに入っているようです。

基本パターンは3つ

不確実性の高い企業環境や、金融業界で用いられる単語として、次の3つがあります。ベースケース、アップサイドケース、ダウンサイドケースです。この3つのシナリオで考える習慣があるといいでしょう。

  • ベースケース:標準的な市場環境や一般的な成長率を前提とした、最も実現可能性の高いシナリオ
  • アップサイドケース:市場拡大や好機の到来により、想定を上回る成長が期待できるシナリオ
  • ダウンサイドケース:市場環境の悪化や予期せぬリスクにより、想定を下回る状況を想定したシナリオ

事例

この3つのストーリーで考えることを習慣にしておけば、様々なケースで利用することができます。事例で考えるとわかりやすいでしょう。

  • M&A案件評価:
    業界平均の成長率を基準とした標準シナリオを軸に、シナジー効果による価値向上可能性や、競合参入リスクを分析
  • 事業に対する投資判断:
    既存事業の自然成長に加え、戦略的M&Aによる成長加速や、マクロ経済悪化による下振れリスクを考慮

前向きはいいが

ポジティブな人、前向きな人は、将来のシナリオを想定するとき、
・想定通り
・想定より良い結果
の2つしか考えない傾向にあります。いわゆるイケイケの状態。想定より悪い状態や、想定より相当悪い状態は考えようとしません。理由は、
・考える必要がないと思っている
・マイナスなことを考えるとそこに向かってしまうから
と考えているからでしょう。しかし、想定はあくまでも想定であり、想定内のことが起こったときは対処法がすぐに浮かびます。しかし、想定していないときは
・想定外
のこととして、対処法が何も浮かびません。単にフリーズするか、環境のせいにして、考えることから逃げてしまいます。それを防ぐためにも、ベースケース、アップサイドケース、ダウンサイドケースを考える習慣は最適だと思います。

まとめ

2008年に発生したリーマンショックを経営者として、リーダーとして経験した人は、ダウンサイドケースを常に意識しています。痛い経験があるので、どうしてもそれを避けたい気持ちがあるからです。できることなら、早い段階で気づいていたい気持ちも大きいでしょう。しかし、あれから15年以上が経ち、あの頃の現役リーダーは少なくなりました。そうなると、未経験のリーダーしかいない企業も出てきています。このような、ベースケース、アップサイドケースしか頭の中に浮かばないリーダーばかりになったときが本当のリスクなのかもしれません。いつも緊張感のある状態を保ちたいと感じます。

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