はじめに

米国の大統領自らがSNSや公の場で特定の企業を名指しして批判するという、かつてあまり見られなかった現象が起きています。そこまで言うのか、と感じます。その背景には何があるのでしょうか。

ウォルマート批判 「関税を吸収せよ」

ウォルマートは決算発表の場で、関税政策の影響で価格を引き上げざるを得ないと発表しました。ウォルマートCEOは「小売業の利益率が小さい現実を考えると、関税圧力をすべて吸収することはできない」と述べました。これに対して大統領はすぐに反応し、自身のSNSで強烈な批判を展開。「ウォルマートは関税を価格引き上げの理由にするのを止めるべきだ。ウォルマートは昨年何十億ドルも稼いだ。予想をはるかに上回った。ウォルマートと中国は『関税を吸収すべき』であり、価値ある顧客に一切請求すべきではない。」という内容でした。大統領はウォルマートに対し、消費者に負担を転嫁するのではなく、企業利益を犠牲にして関税コストを吸収するよう公に求めたのです。

アップル批判 「インドでの生産拡大を止めよ」

同様に、米国大統領はアップルのティム・クックCEOに対しても、インドでの製造拡大計画について厳しい姿勢を示しました。カタールでの演説で大統領は次のように述べています。「ティム、私たちはあなたが何年もの間中国に建設したすべての工場に我慢してきた。」「今はインド中で建設していると聞いている。あなたがインドで建設することは望まない」と公の場で伝えたのです。

企業側の対応

批判された企業側も難しい立場に置かれています。アップルからの公式なコメントはまだありませんが、アメリカ国内でのiPhone生産は労働コストの問題から非常に困難とされています。専門家によると、アメリカ製iPhoneの価格は1,500ドルから3,500ドルになる可能性があるとのことです。2倍以上になってしまうのです。そうなると日本では為替による価格上昇が発生している中で、さらに価格2倍になったら購入する人は激減するでしょう。

まとめ

トランプ大統領による企業批判は、政府と企業の関係における新たな局面を示しています。伝統的に企業活動に対しては市場原理を重視してきたアメリカにおいて、政府のトップが直接企業の意思決定に介入するという行動は注目です。そこまでしなければならない米国の状況を察知しておくべきでしょう。なりふり構わず、と感じる人も多いのではないでしょうか。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆 from2011