シュレーディンガーの猫が教えてくれる
量子力学の有名な思考実験「シュレーディンガーの猫」。箱を開けるまで猫の生死が確定しないという、あの摩訶不思議な話が、ビジネス戦略にヒントを与えてくれるとしたらどうでしょうか。
今回は、この量子論の奇妙な世界から、現代ビジネスを読み解くヒントを探ってみます。
「観測」されるまで市場は「重ね合わせ」の状態にある
量子力学では、粒子は観測されるまで複数の状態が重なり合った「重ね合わせ」として存在すると言われます。そして、観測した瞬間に、その状態は特定のひとつに「収縮」します。
これをビジネスに置き換えて考えてみます。新しい商品を開発する際、市場の反応、顧客のニーズ、競合の動きなどは、実際に商品を世に出したり、調査を行ったりするまで、成功と失敗、需要と供給といった複数の可能性が重なり合った「不確定な状態(重ね合わせ)」にあると言えます。予測がつかないからです。
箱の中の猫と同じような状態
「この新商品は大ヒットするかもしれないし、鳴かず飛ばずで終わるかもしれない」
まさに、箱の中の猫と同じような状態です。
新商品をローンチしたり、マーケティングキャンペーンを開始したりする行為こそが、量子力学における「観測」に他なりません。この「観測」によって、それまで不確定だった市場の反応が「成功」あるいは「失敗」という特定の状態に収縮し、結果が確定するのです。
タイミングを見極める「観測」の重要性
箱を、早く開けすぎても、遅すぎても問題が生じます。ビジネスも同様です。
拙速な「観測」(準備不足での市場投入)は、不十分な情報での判断となり、失敗のリスクを高めます。一方で、「観測」を遅らせすぎると、市場が成熟してしまったり、競合に先を越されたりする機会損失が発生します。
最適な「観測」のタイミングを見極めること。これは、データ分析や市場調査を駆使しながらも、最終的には経営者の直感と決断力が試される局面です。
まとめ
「不確実性」や「観測による現実の確定」という概念は、予測困難な現代ビジネスにおいて、思考を深く、そして柔軟にするための機械です。ビジネスは今、どのような「重ね合わせ」の状態にあるのか。その仮定で考えてみるのも思考の訓練になるでしょう。
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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011