このブランドは大丈夫

「あのブランド、昔はもっと目立っていたのに、最近はなんか普通になったよね。」
そんな風に感じたことはありませんか。今回取り上げるのは、「ブランドの起源の忘却」、そしてさらに深く「ブランドの起源・ビジョンの忘却」という、ブランドにとって静かでありながらも深刻な危機についてです。

ブランドの起源の忘却とは

ブランドの「起源の忘却」とは、文字通りブランドが誕生したときの革新性や、その背景にあった熱い想いが、時間とともに人々の記憶から薄れていく現象を指します。
たとえば、あるブランドが画期的な技術や、既存の概念を覆すようなアイデアから生まれたとします。しかし、時間が経ち、そのブランドが社会に広く浸透するにつれて、「あの特別な価値」よりも、単なる「あのブランド」として認識されるようになってしまうのです。

魅力が失われる可能性

これは、ブランドが成功し、多くの人に受け入れられた証とも言えます。ブランド名自体が一人歩きし、商品やサービスを代表する存在になることは、非常に大きな価値です。しかし、その一方で、ブランドの根っこにある哲学や独自性が意識されなくなることで、静かに、そして確実にブランドの魅力が失われていく可能性を秘めているのです。

なぜ「起源」や「ビジョン」は忘れられてしまうのか

では、なぜブランドにとって非常に重要な「起源」や「ビジョン」が忘れ去られてしまうのでしょうか

  • 時間の経過と世代交代
    どんなブランドも、時間とともに進化します。創業時の熱い想いやビジョンを知る人々が入れ替わり、新しい世代の消費者にとっては、ブランドが最初からそこに「あった」ものとしてとらえられがちです
  • マーケティングの変化
    短期的な売上や市場のトレンドを追い求めるあまり、ブランドの根幹にあるメッセージを伝えきれなくなることがあります。派手なキャンペーンや割引セールに注力する一方で、ブランドがなぜ存在するのか、何を大切にしているのかという本質が置き去りになってしまうケースです
  • 事業の多角化と拡大
    ブランドが成長し、多岐にわたる製品やサービスを展開するようになると、当初のシンプルで強力だったビジョンが薄まり、拡散してしまうことがあります。結果として、「結局このブランドは何を目指しているんだろう」と、顧客が混乱し伝わりにくくなります

忘れられたときの影響

ブランドの起源やビジョンが忘れ去られてしまうと、何が起こるのか。
ブランドの独自性の希薄化します。 起源やビジョンは、そのブランドが「なぜ存在し、何を目指しているのか」を示すもの。これらが忘れられると、ブランドは単なる「売られているその他製品という存在」となってしまうのです。競合との差別化が難しくなり、価格競争に巻き込まれやすくもなります。

まとめ

ブランドのことを考えると、明確ではない領域が多いことに気がつきます。安易にブランディングという言葉を使いたくないのもそこに理由があります。ブランド価値は顧客が決めるものであり、ブランド価値を伝えるのではなく、ブランド価値を顧客に理解してもらうことだと感じています。忘却されないよう、ブランド価値を顧客に理解してもらい、記憶してもらうことが優先です。

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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011