利上げ局面での含み損問題露呈
信金中央金庫(信金中金)は、栃木信用金庫(栃木市)に50億円の資本支援を実施する。この決定の背景には、日銀が利上げに転じた影響で、保有する日本国債の時価が下落し、含み損が自己資本を上回る事態が発生したことがある。栃木信金の保有国債の時価が減少。有価証券全体の含み損は60億円超に達し、自己資本(約50億円)を上回る財務状況となった。
業務停止は見送り
満期保有を目的とした国債の含み損は、決算において、損失処理する必要はありません。そのため表には出てこないのです。しかし、今回の資本支援が露呈したことで、大きな含み損を抱えていることがわかったのです。含み損が自己資本を上回ると、金融庁が業務停止命令を出せるのですが、今回は資本支援、回復の見込みがあるので、停止は見送られました。
今後の懸念
信金中金の集計によると、全国254の信用金庫が保有する日本国債残高は2025年2月末時点で約8兆7千億円。1年間で1割増加し、5年前と比べて4割増加している。融資に回さない余裕資金(約93兆円)の1割程度が国債運用に使われており、金利上昇の影響が顕著に現れている。2024年4〜9月期の決算で、全体の8割以上に当たる200を超える信金が有価証券全体で含み損を計上。
逆に含み益を上げたのは20程度にとどまる。このように、全国規模で含み損が広がっている状況が明らかとなり、今後も同様の支援要請が増える可能性がある。信金中金は、こうした動向に備え、安全網の強化を継続的に進める構えだ。
まとめ
決算処理されない含み損は表に出てこないことがあります。このような資本支援などが発生したときに露呈します。支援のタイミングのときは、資本を超過する含み損になっており、時価評価したら債務超過になってしまいます。ストレステストをすれば債務超過となっているわけです。他にもこのような資本支援が行われるのか、今後の注目です。金利はまだ上昇していくと予想しているので、国債の含み損は大きくなるのは避けられそうにありません。
- 利上げ影響:日銀の利上げで、日本国債の時価が下落し、含み損が拡大。
- 栃木信金の状況:保有国債の時価が減少。全体の含み損は60億円超、自己資本(50億円)を上回る
- 早期是正措置の危機:信用金庫法により、含み損が自己資本を上回ると金融庁が業務停止命令を出せる可能性。今回は見送り
- 支援決定:信金中金が栃木信金に50億円の資本支援を実施。自己資本比率を4%の2倍程度まで回復を目指す
- 全国規模の影響:全国の信金が保有する国債残高は増加中
- 含み損の広がり:2024年4〜9月期決算で、8割の信金で含み損を抱えている
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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011