10年国債が取引成立せず

国内債券市場で、2025年8月13日に発表された「新発10年物国債」の取引が、成立しなかったというニュースは、取り扱いが小さかった。取引未成立は2023年3月以来、約2年5カ月ぶり。それほどの問題ではないのだろうが、未成立だったのは事実。

なぜなのか

夏なので、取引が少ないから未成立だったのではないか。夏枯れだから、そうなる。そんな論調も見られます。ストレートな言い方をすれば、流動性が低くなっているのです。これが一過性ならば問題ありません。継続するとやっかいです。

注目すべきは、需要側の減退があるのかどうか。日本国内の資金余剰が続く中、銀行や保険会社などの機関投資家は、リスク回避姿勢を強めて短期資産へシフトしています。そのため、日本の国債も長期の割合を減らし、短期の国債発行を増やす方針になっています。これも国債引受側のニーズに沿った考え方です。

短期が増えると

ただ、短期の国債が増えることは、リスク要因にもなります。お金の借入でも同じですが、短期借入より長期借入の方が返済金額も少なく資金繰りは安定します。国債も同様で、短期が増えるほど借換発生時期も短くなるので、自転車操業になってしまうリスクが増えていくのです。

今後の見通

取引未成立を受け、証券会社や投資顧問は「流動性リスクへの警戒」を強めているのではないでしょうか。特に機関投資家はポートフォリオの再配分を検討し、短期国債などへシフトする見込みです。日本の国債金利も上昇傾向なので、その流れは強くなっていく時期です。

干渉になるのか

米国財務長官ベッセント氏は先日のインタビューの中で
・日本金融政策に言及
・日銀インフレ対応「後手に回っている」
と発言しています。この意図は、現状の姿は理想ではない、と伝えています。ここまではっきりと明言するのは珍しい。日銀に対しては、金利を上げろ、と暗に要求しています。為替相場も現在の状態では満足していないのでしょう。

まとめ

夏のこの時期に、金融に関しては動きがあるので取り上げました。小さな動きではありますが、この先を予想するには必要な材料だと感じています。小さなできごとが積み重なって、最後には大きな事象へとつながることがあります。そのための兆候だと感じるのであれば、見逃せない内容です。

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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011