成長は一直線ではない
スキルや能力はまっすぐに伸びていくものだと考えがちです。そんな人もいるとは思いますが、成長したと思ったら、成長が止まったり、中には、下降するときもあるでしょう。順調に伸びていく人はごく少数であり、通常は、さまざまな上がり方をするものです。成長は、二次曲線を描いていく、と表現する人もいました。継続的な学習を続けると、突然急成長する時期が来る現象です。しかし、これも成長プロセスの部分的なことを表現しているにすぎません。かなり複雑な曲線を描いて成長を歩んでいくことの方が多いのです。
「ダイナミックスキル理論」とは
そのような成長に関して複雑な曲線を描くことを「ダイナミックスキル理論」と呼んでいます(カート・フィッシャー氏提唱)。具体的には
・人の成長は一直線ではなく、曲線を描きながら進む
と定義しています。最初は順調に上達しても、ある時点で一時的に停滞したり、パフォーマンスが落ちるように感じることがあります。これは決して後退しているわけではなく、むしろ次の段階へジャンプするための「準備期間」と考えます。その後、急に成長スピードが上がる時期が来ます。これがダイナミックに習得する時期というわけです。
3ステップ
ダイナミックスキル理論には、次のような3つのステップがあります。
* スキルの統合:
最初はバラバラだった知識や動きが、少しずつまとまっていく段階。たとえば、自転車に乗るとき、最初はペダルをこぐこととハンドルを操作することを別々に意識します。それが同時にできるようになっていくのです
* パフォーマンスの安定:
統合されたスキルが定着し、無意識にできるようになる段階です。自転車の例でいえば、何も考えなくてもスムーズに進めるようになる状態です。操作の順番を考えることなく操作できる状態と考えてください
* 新しい課題への挑戦:
さらに高度なスキルを目指し、新たな課題に挑む段階。このとき、一時的にパフォーマンスが不安定になる「発達の弛緩」が起こることがあります。しかし、この不安定さが、次のレベルへと進むためのカギとなるのです
この3つのステップは、誰もが経験しているのではないでしょうか。自動車の運転も振り返れば、このステップを歩んでいると思います。
「発達の弛緩」を乗り越える
ひとつだけポイントとなるのは、新しいスキルを習得するときに直面する「発達の弛緩」。この時期は、モチベーションが下がりやすく、挫折を感じてしまうかもしれません。しかし、これは成長の自然なプロセスであり、決して無能だから起こるわけではありません。むしろ、新しい情報を処理し、スキルを再構築している証拠なのです。この時期に大切なのは、焦らずにじっくりと取り組むこと。この不安定な時期には、励まし、小さな成功を重ねることが有効です。
まとめ
ダイナミックスキル理論は、成長が単純なものではなく、複雑でダイナミックなプロセスであることを示しています。直面する停滞や後退は、実は次の大きな飛躍のための準備期間。この視点を持つことで、自分自身の成長にも、チームの育成にも、より自信を持って向き合えるようになるでしょう。新しいことに挑戦し、不器用だと感じても、それは成長している証拠だと信じ、前向きに進み続けることです。
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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011