会計問題
ニデックの会計問題、監査法人のPwCジャパンが「意見不表明」を出しました。この規模の上場企業において、監査法人が意見不表明を出したのは、今回で2件目ぐらいだと思います。
この会計問題の発端は、
・資産性にリスクのある資産に関する評価減の時期の恣意的な調整などの連結財務諸表全体に重要な影響を及ぼす可能性のある不適切な会計処理の疑義を認識した
ことからスタートしています。
当監査法人は、「意見不表明の根拠」に記載した事項の連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響の重要性に鑑み、連結財務諸表に対する意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかったため、監査意見を表明しない。
監査法人は、企業の財務諸表(決算書)に対して行う監査意見をだします。基本、3種類あります。監査意見は、その企業の決算書が「適正」かどうかについて、監査人が判断を下す必要があるので、その結果をあらわします。
次の3種類
監査法人の意見は次の3種類です。
① 適正意見
・意味::
財務諸表が、企業会計の基準(一般に公正妥当と認められる企業会計の基準)に従って、企業の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認めるときに表明される意見
・決算書に対する評価:
投資家や債権者は、この決算書を信頼して利用できる
② 不適正意見
・意味:
財務諸表が、企業会計の基準に準拠していないなど、重要な虚偽の表示があり、企業の財政状態などが適正に表示されていないと認めるときに表明される意見
・決算書に対する評価:
大きく間違っている箇所があります。決算書の内容は部分的に信頼できません
③ 意見不表明
・意味:
監査人が、監査に必要な十分かつ適切な証拠を入手できなかったため、財務諸表に対する意見を形成することができないときに表明される意見。たとえば、企業が災害などで資料提出できない場合や、重要な会計資料の提出を拒否した場合などになります
・決算書に対する評価:
決算書の判断不能。監査人としての判断を表明できる状況にないことを表明しています
意見の種類 | 決算書への信頼性 | 意味 |
---|---|---|
適正意見 | 高い | すべてOK |
不適正意見 | 低い | 大きな間違いあり |
意見不表明 | 不明 | 判断不能 |
わかること
監査法人として、このような意見不表明を出すことは、ほとんどないことです。仕事として監査をしているので、判断できないと表明することは、クライアントの将来も左右してしまいます。今回のケースだとニデックの信用問題になっていきます。しかも、監査法人は上場会社から多額の報酬を得ていますので、それを自ら放棄することにもなります。
しかし、監査できないことを表明することは、きちんと仕事をしていることにもなりますので、そこは評価される内容です。この意見不表明を決断するまでに悩んだのではないでしょうか。
まとめ
創業者が現役でワンマンタイプとして見られているニデック。統率力があるリーダーとして有名ですが、業績至上主義なところもあったのではないでしょうか。そのため、「資産性にリスクのある資産に関する評価減の時期の恣意的な調整」は、プレッシャーから発生したのではないかと想像しています。大手企業で発生した不正の報告書を見ると、「上からのプレッシャーに耐えられずやってしまった」と書いてあるものです。今回も似たようなケースではないかと予想しています。それにしても、監査法人の意見不表明はインパクトが大きいです。
ニデックが有報提出 会計問題、監査法人は「意見不表明」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF260FR0W5A920C2000000/
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