「システミックリスク」
外に出て買い物をする。食事をする。品切れ、欠品が増えているのに気がつくでしょうか。これは仕入れを抑制しているから発生していることです。しかし、ときにはサプライチェーンのどこかでトラブルが発生していることもあります。飲料メーカーのシステム障害でコンビニや飲食店で欠品が発生しています。これも解決までまだ数ヶ月かかるようです。たったシステムが動かないだけで物流が止まるのです。
経済やビジネスは連鎖で動いています。たったひとつの「つながり」が切れるだけで、商品が店頭に並ばなくなる。この現象、経済学では『システミックリスク』と呼ばれています。
システミックリスクとは
システミックリスクとは、「ひとつが壊れると全体に影響が広がり止まる」ことです。
- システミック(systemic)=「システム全体に関わる」
- リスク(risk)=「危険・不安要素」
つまり、
・一部が壊れると連鎖的に他の部分も崩れ落ち、最終的にシステム全体が止まってしまう危険
と考えておいてください。たとえるなら次のような現象です。
- ドミノ倒し:一本だけ倒すと次々に全部が倒れていく
- 水道管の破裂:一つの管が割れるだけで、建物全体の給水が止まる
サプライチェーンは企業同士が部品や原材料を売り買いする「ネットワーク」。その中に「ハブ」と呼ばれる重要な拠点があると、そこが止まった瞬間に連鎖ストップが起きます。今回発生している飲料メーカーのシステム障害はハブになる領域が止まり、全体が止まってしまったのです。
実際に起きた過去のできごと
過去を振り返れば大きなシステミックリスクが発生しています。
・オイルショック(1971年、1973年)
中東で原油供給が急減し、エネルギー価格が急騰。製造業や輸送業はコストが跳ね上がり、世界的に景気が後退
・リーマンショック(2008年〜)
米国の住宅ローン問題が金融商品を通じて世界中に広がり、銀行が次々に信用不安に陥った結果、金融システム全体が崩壊。世界中を巻き込んだ
・半導体不足(2020‑21年)
需要と供給のバランスが急に崩れ、半導体供給が逼迫。スマホ・自動車などは部品調達に苦しみ、生産ラインが停止
これらのできごとを振り返るとわかることがあります。それは、共通点として
・「代替ルートがほとんど無い」ハブが止まった
ことです。依存していたルートが絶たれ、その瞬間に全体が揺れ動き、システミックリスクが顕在化しています。
まとめ
システミックリスクが発生したときにリスク回避するには、代替ルートを確保しておくことになります。しかし、供給ルートを増やさないのには、理由があります。専用の部品を製造してもらっている場合には、1社にだけにしたいのです。複数に製造を依頼すると企業秘密がバレてしまう恐れがあるからです。しかし、1度サプライチェーンが止まる経験があると、代替ルートの確保をするようになるのです。これから先もシステミックリスクは発生するので、代替ルートを考えておきたいところです。
——————————-
スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆
