依存させる仕組み
SNSの利用について、次のような本質を突いた内容があります。
「ハマる。考えないようにさせる。考えないことで依存させる。これが最近のSNSの仕組み。」
これは、いつも利用するSNS、特にショートムービーが、単なるツールではなく、人間の心理と行動を深く研究し尽くした「中毒性のある設計」の上に成り立っていることを示しています。今回は、貴重な時間と集中力を奪っている「ハマるアルゴリズム」の正体について取り上げます。
報酬系を刺激する原理
SNSの中毒性を高める設計のひとつに、「間欠強化(Intermittent Reinforcement)」があります。これは、ギャンブル依存症のメカニズムと非常によく似ています。予測できないタイミングで間欠的に報酬が発生する。定期的に発生しないので、余計ハマる仕組みです。アプリを開くと報酬が得られる。でも、いつもではない。予測できないタイミングで得られるので、アプリを開くことが促進されるのです。
| 仕組み | SNSにおける具体例 |
|---|---|
| 間欠強化 | 報酬(快感)が「予測できないタイミング」で与えられることで、その行動(アプリを開くこと)が最も強力に習慣化されます。 |
無限スクロール
アルゴリズムは、ユーザーが立ち止まって考える隙を与えないよう、インターフェースレベルでも巧妙に設計されています。フィードが途切れることなく無限に続いていくデザインは、「これで終わり」という区切りを意図的に排除します。やめるきっかけや判断の機会を失わせ、ただ受動的に情報を受け取らせる状態を維持します。
ショートムービーでは、ひとつの映像しか流れません。しかも、次の動画に移動することもできますが、終わりはありません。無限にスクロールし続ける仕組みです。一つの動画に集中させながら、飽きたら次の動画へ移動するのですが、いつまでも終わらないサイクルをつくっています。
「3秒のフック」技術
特にショートムービーにおいては、「アルゴリズムの力」に加え、クリエイター側の技術が加わり、その依存性を最大化しています。ユーザーは、動画を見るかスワイプするかを冒頭の3秒以内で瞬時に判断します。クリエイターはこの3秒間に、視聴者の好奇心や疑問を強制的に引きつける「フック(Hook)」を仕掛けます。強烈なものは、最初の1秒で勝負しています。それほど詳細に設計されていることを知っておくといいでしょう。
| フックの技術 | 効果 |
|---|---|
| 結論先出し型 | 「これが年収を2倍にした方法です」のように、動画の最大のベネフィットを冒頭で提示 |
| 視覚的なギャップ | 驚くような映像や、予測不可能な展開のヒントを最初に見せ、「どうしてこうなった?」という疑問を刺激 |
| 強調ワード | 「知らないと損!」「超朗報!」など、感情を揺さぶる強い言葉を提示 |
まとめ
ハマることはわるいことではありません。しかし、なぜ自分がハマるのかは、知っておきたい部分です。しかもそこには詳細な設計があることも理解しておくべきでしょう。人間の反応は、世界中同じと言われています。それほど、人間の根源的なところを刺激するように仕組み化されているのです。
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