トップに立つ人が「遅咲き」である場合

「何かを成し遂げるなら、とにかく早く始めなければならない」
「一つのことに集中して、1万時間の努力を積み重ねるべきだ」

ビジネスの世界でもスポーツの世界でも、このような「早期教育・早期専門化」こそが成功への王道だと信じられているところがあります。でも本当にそうでしょうか。それしかないのでしょうか。いつも疑問に感じていました。たしかに、早い方が良いとは思いますが、人には未知の能力も備わっているので、早期に固定してしまうことのリスクもあると感じるのです。

実は、最終的にトップへ到達する人たちの多くは、若いころに複数の分野を経験し、専門を決めるのが比較的遅く、初期の成績の伸びも緩やかであるというデータがあります。今回は、この法則について取り上げます。

早期専門化ではないのを目指す

早期専門化の成功例としてよく挙げられるのが、ゴルフのタイガー・ウッズ。彼は生後数ヶ月でパターを握り、幼少期からゴルフ一筋の英才教育を受けました。これはまさに「1万時間の法則」を体現した姿です。

一方で、テニス界の至宝ロジャー・フェデラーのキャリアは対照的です。彼は幼少期、サッカー、水泳、スキー、バスケットボールなど様々なスポーツを楽しみました。テニスに一本化したのは10代半ばになってからです。

どちらのパターンが多いのか。実は、成功者は、タイガー型ではなく、フェデラーのように「多様な経験を経てから専門化パターン」が多いことが分かっています。想像すればわかりますが、幼少期に専門化するには環境が必要です。環境が整っている場合の方が少ないということです。

「回り道」がもたらす強み

なぜ、回り道をした方が、最終的に早期専門化組を追い抜いていくのか。それは「サンプリング期間(お試し期間)」と呼ばれる時期に重要な土台がつくられるからです。やはり、いろいろな分野を経験することには、大きなメリットがあるわけです。

・自分に最適な領域が見つかる
早期に専門を決め打ちしてしまうと、それが本当に自分の才能や性格に合っているか確認する時間がありません。多様な経験をすることで、「自分は何が得意で、何に情熱を持てるか」という適合性の高い分野を見つけ、確認することができるのです

・知識の応用が効く
ひとつの世界しか知らないと、思考が画一的になりがち。しかし、複数の分野を知っていると、ある分野で得た知識や視点を別の分野に応用することが可能。ビジネスにおいてイノベーションが生まれるのは、こうした「異なる領域の結合」から起きる。多様な経験はこんなところで必須だと感じます

まとめ

もし、歩みが遅いと感じたり、まわりよりも専門化が遅れていると不安に感じたりしても、焦る必要はありません。なぜなら、1年先の未来がどうなっているかさえ、予想できないときもあるからです。どのような未来を描くのかわからないときほど、経験の幅を広げておくことは大事。自分の専門はこれ、と決めつけず、経験する領域を広げることが将来を高めることになるでしょう。

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