呼称変更

職人(技術職)の呼称を「クラフター」に変えたりしてイメージを変える動きがあります。その原因は、人手不足だからです。募集しても人が来ません。技術職や営業職は特に人気がないと感じます。イメージ戦略としてはSNSで動画を発信したりする動きもあります。大工の息子さんが撮影した父親の職人姿がSNSで注目を集めるなど、イメージアップに向けた取り組みです。これは、コンテンツとして見ていて楽しい。ただ、これで大工という職業につく人が増えるのかは疑問。

イメージだけでは

たしかに、新しい呼称は、3K(きつい、汚い、危険)といった古い先入観を払拭し、若年層がこの業界を「選択肢」に入れるための入り口としては有効です。また、動画を通じてスタッフの技術が可視化されることは、プロとしてのプライド向上にも寄与します。

ですが、どれほど「かっこいい」動画で門戸を叩いても、その先に待っている実態が「低賃金・長時間労働」のままであれば、入社したスタッフはすぐに離職してしまいます。イメージと実態に乖離があれば、それは一時的な流行で終わってしまいます。

結局のところ

根本的な解決に必要なのは、イメージの書き換えではなく「給与報酬の劇的な引き上げ」と感じています。実際に米国では今、Z世代の若者たちがオフィスワーカーではなく熟練工を目指す現象が起きています。これは決してイメージに憧れたからだけではありません。職人の給与が急上昇し、大学を出てローンを抱えるよりも、職人として働く方が経済的に合理的で、高い年収を稼げると判断したからです。

仕組みを元から

そのように考えてみると、次のような点が課題です。

・多重下請け構造による利益の分散を解消し、現場で働くスタッフに正当な報酬が届く仕組みを作ること
・日当制(日給月給)などという不安定な雇用形態から、月給制や福利厚生の充実といった安定した生活基盤を構築すること
・テクノロジーを導入して生産性を高め、高い収益を上げられる環境を整えること

まとめ

「かっこいい」という入り口の先に、他業種に負けない「高い報酬」という出口が用意されて初めて、職人不足は解消に向かうと考えています。スタッフの技術が正当に評価され、それが見合う金額として還元される。この当たり前の循環を作ることこそが、解決に向かうでしょう。そうしなければ、本当に現場が動かなくなると思います。

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