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~経営には優先順位がある~経営コンサルタント藤原毅芳執筆
年に何回しかないこと
経営においては年に数回しか発生しないことに対処しなければ
なりません。
もしくは数年に一度のことも対応する責任があります。
先日、運輸業の訓練施設を視察させてもらいました。
運輸業は幅広い業界でモノを運ぶ企業もあればヒトを運ぶ企業まで
含まれます。
私は出張が多いので運ばれる側にいますが、企業姿勢はいつも
関心があります。
年に数回しか発生しないことに対して、どのように対応するのか、
といったことから、どのように対応力を上げているのか?といった点です。
その点について思うところを書いていきます。
経験では学べない部分
年に数回しかないことを「経験して学びなさい」と言っても
あまり意味がないように感じます。
経験が連続して発生することなら現場で学ぶことができますが、
経験したことを忘れた頃にまた経験しても学びはありません。
蓄積もないのです。
こんな事象は、経験値を上げるのに数年から10年間はかかりそうです。
訓練しかないのか
そうなると、経験ではなく「訓練」しかありません。
集中的に訓練を積み、忘れない経験にするしかないということ。
そのように感じます。
そう考えると、航空会社がパイロットの訓練に数億円するシミュレーターを
導入している意味がわかります。
飛行機の場合は、たまに発生することを「重大なインシデント」と呼んでいます。
意味は「事故が発生するおそれがあると認められる事態」のこと。
パイロットひとりあたり、年に数回も経験しないのではないでしょうか。
数年に一回程度の人もいるかもしれません。
それを経験からは学ぶことは難易度が高い。
読んで知っていても冷静に対処できるとは限りません。
そのために訓練が義務付けられているのです。
数年前、こんなことがありました。
離陸直後に右エンジンから異音が1分以上続きました。
明らかな異音でしたがエンジンは回り続けています。
異音がなくなった直後、機長から
「エンジンは正常に動いておりますが緊急着陸します」
とアナウンスがありました。
おそらく異音が出ている間に様々な選択肢を考えて判断したと
思われます。
その後、すぐに着陸をして次の飛行機に振り替えて移動できました。
こうしたときの、判断基準をどのように教えていくのかが
気になった次第です。
訓練法を知っておく
訓練の手法は擬似体験をすること。
本番さながらに体験することです。
自動車の運転では滑りやすい路面の訓練などが有効とされています。
イザというときに落ち着いて判断操作できるまで擬似体験を繰り返す
ことになります。
欠点もある
しかし、この擬似体験にも落とし穴があります。
先ほどの自動車運転について滑りやすい路面での運転訓練をした人ほど、
今度は「過信する」ことがあるのです。
「まだ大丈夫」という自信が対応を遅らせて大きなことになってしまうのです。
雪道の運転訓練では、訓練を受けた人ほど事故率が高くなったという
事例があるのです。
限界を超えて限界を知る
では、どうすればいいのか?
それはシミュレーションの擬似体験で限界を超えておくことです。
飛行機の操縦シミュレーターでは悪条件で「墜落」まで体験させています。
そうすることによって、自分の実力を過信することはありません。
また、悪条件がここまで重なるとコントロール不能になることも実感します。
まとめ
こうして考えていると2つのことに着目できます。
それは
・集中的な訓練
・限界を知る
の2点です。
限界を超え、限界を知るというのは、実際の現場では体験させ
られません。
シミュレーターの中でいかにリアルに感じさせるのかがカギに
なるでしょう。
そういう意味ではVR(バーチャルリアリティ)は高い有効性を
持っています。
個人的には、訓練、研修の世界はVRに席巻されると考えています。
座学で教える意味がなくなるからです。
いずれはそうなるでしょう。
まとめると、なかなか経験できないことの対応を習得するには
リアルな訓練を集中的に積むことだと思います。