一気に破綻

2023年3月から今日(2023/05/04)までに3つの米国銀行が破綻しています(シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、ファーストリパブリック銀行)。たった2ヶ月間で発生したことです。これらの銀行が破綻した理由は金利上昇がきっかけでした。金利上昇により保有資産(米国債など)が含み損になり、その噂がSNSで広がり、預金流出が起こり破綻してしまったのです。ネットバンキングによる預金流出は一定スピードで発生するわけでもなく、また流出スピードに上限があるわけでもありません。加速度的事象として預金流失が起こったのです。そのため短期間に破綻してしまうのが特徴。では、この3つの銀行破綻を以前と比較するとどうなのでしょう。

破綻規模

この3つの銀行の破綻時の規模を図(円)で表すと大きさが理解できます。リーマンショック時の銀行破綻で最大がワシントンミューチュアルでした。今回の3行との規模を比較すると、今回の3行の合計がミューチュアル銀行を軽く超えているのがわかります。破綻規模の合計については今回の方が大きくなっているのです(1.7倍)。

なぜ利上げを決定したのか

銀行破綻が続く中、FRB(米連邦準備理事会)は金利の利上げ(0.25%アップ)を決めました。金利が上昇すると損失が拡大する銀行があり、今後の銀行破綻を懸念するならば、このタイミングで利上げはしません。しかし、利上げを決定しました。その理由はどこにあるのでしょうか。

それは、インフレ対策です。インフレを冷ますために利上げを決定しました。銀行破綻の懸念よりインフレ抑制対策を優先したのです。インフレがおさまらないので、銀行破綻の心配もありますが、インフレ退治の方が大事だと判断したのです。

預金集め

米国の金融機関の不安定な状況時に、新たに参入する企業もあります。Appleが預金サービス(Apple Card Savings)を2023年4月からスタート。Appleのカードを所有している人向けに預金サービスを始めたのです。しかも預金の金利は4.15%。他の金融機関の貯蓄口座金利と比較して約10倍の金利がつくことになります。そのため、たった4日間で約10億ドル集めました。日本円で1300億円超になります。

金融不安のときは「安心できる大手」に預金を移動したり、こうした高金利な新しい預金サービスへと預金が移動していきます。不安定な時期ほど新しい企業が参入してきたり、新サービスを打ち出してくるものです。

まとめ

インフレ抑制を優先するのか、銀行破綻予備軍の対応をするのか。この2択から1つだけ選択するとするならば、どちらを選ぶのか。今回のFRBの決断はインフレ抑制を優先しました。どちらも選択したいのがホンネでしょう。僅差でインフレ懸念の方がリスクが大きい、と判断したと思われます。日本にいると理解が乏しいのですが、米国のインフレはおさまる気配が少ない。ようやくインフレが少しおさまってきたと思われる指標が出てきていますが、まだインフレ鎮火が確実ではない。そんな状況が読み取れます。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆