金融機関保有の株式含み益

 地方銀行の債券含み損に関する記事が出ていました。しかし、注目すべきは含み損のことではなく、株式の含み益についてです。今回は、含み益について取り上げたいと思います。地方銀行の中で、株式の含み益トップは京都銀行の7622億円、第2位が長野県の八十二銀行の4165億円、第3位が静岡県の静岡銀行の3555億円となります。特に京都銀行は任天堂やニデック(日本電産)、村田製作所、京セラ、オムロン、ローム、島津製作所の株主なので含み益が大きいのです。「京都銘柄」と呼ばれる株式を保有していることで大きな含み益となっています。メガバンクでは、三菱UFJ銀行が京都銘柄企業に強いといわれています。ニデック(日本電産)には三菱UFJ銀行出身者が多いことで有名です。

地銀の債券含み損、前期は5倍の1.8兆円 金利上昇で打撃 – 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB151RX0V10C23A5000000/

静岡銀行、八十二銀行についてはエリアのシェア率が高いのが特徴です。静岡銀行だと県内シェア40%、八十二銀行は県内シェア50%超となっています。八十二銀行は長野銀行との統合も控えており、さらにシェアは拡大します。両行ともシェア率が高いため、与信がしっかりしている印象があります。手堅い金融機関というイメージでしょうか。静岡銀行については、バブル時代にノンバンクから資金を引き上げた逸話は今では美談として語られています(当時は儲け損なったとバカにされた)。

金融機関の情報

どうしてこんな記事がこのタイミングで出るのだろうか、と思う記事が出ていました。

三菱UFJ銀行、円金利上昇で収益500億円増 10年債1%で:日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB176I60X10C23A5000000/

金融機関の試算が出ていたのです。金利が上昇すれば500億円の収益増となるという試算。金融機関が投資家向けの説明会で発表した内容です。金融機関としては金利アップで収益を確保したいという願いもあるのでしょう。長年低金利が続いているので、金利上昇への期待がここから読み取れます。

コストはきわめて大きい

新しく日銀総裁に就任した植田総裁の考えが少し明らかになりました。就任後初の講演内容が公開されています。植田総裁の言葉はとても丁寧な表現です。ただ、本心は逆に読みにくいと解釈されています。

「拙速な政策転換を行うことで、ようやくみ えてきた2%達成の『芽』を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きい」(日本銀行総裁」植田和男氏)(注:就任後初の講演にて、PDF:13ページより抜粋)

金融政策の基本的な考え方と
経済・物価情勢の今後の展望
―― 内外情勢調査会における講演 ―

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230519a1.pdf

まとめ

金融機関の業績については含み損が注目されてしまいます。やはり心配だからです。米国の金融機関の破綻もあるので関心は高まっているのかもしれません。ただ、逆の含み益についてもっと注目されていいのではないでしょうか。

金利上昇についても意見、期待がさまざま出てくるようになりました。駆け引きがはじまったような様相です。金利が上昇するのは当然なのですが、いつになるのか当てることはできません。また、金利上昇が発生する時期も今年、来年、再来年かもわかりません。日銀の植田総裁も5年間の任期中に手をつけられないかもしれない、と言ってしまっています。時間軸が長いので、長期的視点で見るしかなさそうです。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆