自己研鑽支援金

新卒採用の初年度における賞与を通常以上の支給を行なった大企業があります。新たな取り組みを打ち出しましたのです。それは自己研鑽支援金という名の追加支給です。自己投資のためにその金額を使用し、自己成長を推進してほしい、という期待が込められています。企業から従業員への願いとも言えるでしょう。

賞与の使い道

この新たな取り組みについてどのように感じるか、また、企業が直接支給金の使い道を示唆するということに対し、抵抗を感じる人がどの程度存在するのか、その評価や反応は非常に興味深いです。

先日行われた賞与に関するアンケート調査では、半数以上(55%)の人が賞与を貯蓄に回すと答え、15%の人はまだ何に使うか決めていないという結果が出ています。つまり、7割近くの人が賞与をすぐには使わないという現状があるのです。

偏りは良くないのでは

確かに、お金を使うことが全て良いわけではありません。何も考えずに浪費するのは避けるべきです。しかし、一方で自己投資に資金を回すことも重要であり、それをどこまで意識しているのかが問われているのです。

現在、投資というと株式投資などの金融商品への投資が若干加熱気味で、特に20代の間でもその関心が高まっています。それ自体は悪くありません。しかし、一方向に偏るのはどうかと感じます。

投資の世界では「分散投資」が良いとされていますが、人生においても、貯蓄だけ、あるいは金融商品への投資だけではなく、自己投資への分散投資は理にかなっていると思います。それは、貨幣価値が永遠に一定ではないという経済の実態からも明らかです。

貨幣価値は永遠ではない

戦後の混乱期、日本でも悪性のインフレが発生し、資産が半減した人もいました。大半を失った人もいたでしょう。そのような経験をした人からは、「自己投資が最も確実性が高い」という声があったようです。なぜなら、自己投資し得られた実力の価値は減ることがないからです。価値が維持できる、確実性の高い資産と言い換えることもできます。

経営の安定には欠かせない

企業が自己研鑽支援金という名目で追加支給を行うのも、企業価値を維持するために最も確実性の高い内容だと認識しているからかもしれません。人財の成長は価値の急な毀損もなく、経営に安定感をもたらすことでしょう。資産として計上されることはありませんが、もっとも大切な資産になると感じています。

まとめ

経営の永続性はさまざまなポイントがありますが、人財の成長はひとつのカギになります。企業発展の根拠にもなります。継続は成長と発展がなければ達成できません。世の中は勝手に進みますし、動いています。自己研鑽する人が増えるような環境づくりも経営の目指すところのひとつだと感じます。

三菱自、新卒社員の夏季賞与を倍増 15万円は自己啓発に:「自己研鑽(けんさん)支援金」日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC21DL70R20C23A6000000/

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