時間は変化を与える
かつて、マネされる側の存在が、今やマネする側へと立場を変えざるを得ない状況に立たされました。時間の経過は少しずつ変化を与え、最後には逆転してしまう。ゆっくりとした時間の流れかもしれませんが、ゆくゆくは実感する人も増えていくでしょう。
その中心は、製造業のトップとして業界を支えてきたトヨタ自動車です。トヨタは一時期、その生産手法が全世界の製造業から学ぶべき模範ケースとして注目されていました。トヨタ生産方式の「JIT(ジャスト・イン・タイム)方式」は特に有名です。トヨタ自動車出身の方々が「製造コンサルタント」や「生産管理研修講師」としてその最先端の手法についてセミナーなどを開催して広められてきました。
逆転か
しかしながら、時代は移ろい、その盛況も過去の話となりつつあるのかもしれません。かつて、追われる存在だったトヨタが、今度は追いかける側へと移行せざるを得ない状況に立たされています。この逆転現象は、それまでのトヨタの地位を考えると、相当な衝撃をもたらすできごととなります。
だれしも永遠にトップに君臨し続けることは不可能ですが、自分たちが競争相手として認識していなかった他者に後れをとるというのは、何とも屈辱的な事態でしょう。その新たなライバルとは、米国の電気自動車メーカー、テスラ社です。過去にはトヨタとテスラは提携していましたが、その後、提携を解消しました。当時はトヨタが彼らを競争相手として認識していなかったから解消したのでしょう。
新旧王者比較が
しかしながら、そのテスラ社は現在、”ギガキャスティング”と呼ばれる大型の鋳造設備を利用し、複数のアルミ部品を一つのパーツとして成型する画期的な手法を採用しています。例えば、後部のシャシー部品は「100超の部品、溶接100〜200箇所で製造」していた複雑なプロセスを「1部品・1工程」に集約することに成功したのです。
このような革新的な手法は、従来の製造方法による改善(KAIZEN)だけでは到底追いつけないものです。そのため、トヨタも同じギガキャストを導入することに決めたのですが、この方法がテスラ社から始まったという事実が、業界内外で大きな注目を浴びています。
メディアでは「新旧王者の逆転劇」「トヨタの葛藤」といった言葉が飛び交い、新旧の巨頭が競い合う様子が報じられています。トヨタが短期間で窮地に立たされることはないでしょうが、10年後に振り返った時、「あの時が分岐点だった」と言われる可能性もあります。今後のトヨタの動向、そしてその取り組みが製造業全体にどのような影響を与えるのか、引き続き注目です。
まとめ
トヨタが生産方式について後追いをする時代が来るとは予想していませんでしたが、現実にはそうなっています。電気自動車に関しては、他のメーカーより明らかに遅い展開。これも意図的な戦略であれば問題ありません。個体電池などの技術革新を持って一気に電気自動車カテゴリーでトップを取る可能性もあるからです。まだその戦略は公開されていませんが、期待する部分でもあります。
トヨタ、EVでものづくり革新 生産工程や投資を半分に:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC04CEA0U3A700C2000000/
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