停車中の電車と錯覚
止まっている電車に乗っているのに、隣の電車が動き始めたら、それに反応して、突然あなたの乗っている電車が動き出したように感じます。しかし、実際にはあなたの電車はまだ停車しています。なぜこのような錯覚が起こるのでしょうか?これを理解するためには、「ベクション」という視覚現象を知る必要があります。
ベクションとは何か?
ベクション(vection)とは、静止している人が動いている物体を見たときに、自分が動いているかのように感じる視覚的な錯覚のことです。この現象は、日常生活の中でよく起こり、特に乗り物の中でよく経験されます。
ベクションのメカニズム
視覚システムが自分の身体の動きを判断していることがベクション事例でわかります。通常、自分が動いているかどうかを判断するために、視覚情報と前庭系(バランス感覚を司る内耳の一部)からの情報を組み合わせて判断します。しかし、この二つの情報源が一致しないとき、視覚情報が優先され、自分が動いているかのように感じることがあるのです。
先程の事例だと、停車している電車に乗っていて、隣の電車が動き出すと、視覚情報は「私は動いている」と伝えます。しかし、前庭系は「私は動いていない」と伝えています。この食い違いが生じると、私たちの脳は通常、視覚情報を優先し、結果としてベクションの錯覚が生じているのです。
ベクションの影響
ベクションは、乗り物酔いの原因の一つともされています。視覚的な動きと身体の感じる動きが一致しないことで、脳が混乱し、それが吐き気やめまいを引き起こすと考えられています。また、ベクションは、バーチャルリアルティ(VR)などの技術においても重要な役割を果たしますと言われています。VRでは、ユーザーが動いているかのように見せることができるので、よりリアルな体験が可能になるのではないでしょうか。
まとめ
停車している電車に乗っていて隣の電車が動き出すと、自分も動いているように感じる。この現象を理解すれば、視覚情報と身体の動きが一致しないとき、視覚情報を優先し、ベクションの錯覚が生じているのが実感できるようになるでしょう。理解することで、乗り物酔いからVR体験まで、生活と科学的探求に対する理解を深めることができると思います。今後はベクションを利用することが当たり前の世界がやってくるのかもしれません。
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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆