2つに分かれる

停滞から動き始めには、仕事以外にも付き合いやプライベートの用事も増えていきます。仕事面でも一気にプロジェクトが動き出すことになり個人の仕事量は急増する人も出てきています。そのような現象を見ていると、人の反応が分かれることに気がつきました。次のような感じです。仕事量が自分の限界に達したとき、人々の反応は主に二つに分かれるのです。
①限界値を設定してしまう人
②限界値を拡張しようとする人
に分かれています。

それぞれの特徴とは

まず、1つ目の限界値を設定するタイプの人々について考えてみたい。これ以上は無理だと感じ、仕事量の上限を自ら設けてしまう人です。新たな仕事が依頼されても、その事実を忘れ去るといった行動をとることもあります。これは無意識の行動なのですが、なんとなく忘れてし待ってもいいかな、といったパターンもしばしば見受けられます。その辺りは周りから見て判断できません。

新しい分野についても限界値を自分で設定し、それを押し通すこともあります。デジタル化やDX、AIについては最初から受け入れないといった行動もあり、限界値を設けるというより、拒絶していることもあるので注意です。リーダークラスでこのような限界値を設定する人は、もう一方の②限界値拡張する人に対して「あれはダメだ」とマイナス点を探したり、メンバーにそのような論評を述べ始める傾向にあるのは確認しています。

拡張タイプは

一方、②の限界値を拡張しようとするタイプの人は、自分自身の限界を超越しようと努力しようとします。自己の限界枠を広げようとして、効率化の方法を考えたり、仕事を忘れないような仕組みを作ったりするなど、問題解決に対する積極的な姿勢を持ち合わせています。

新しい分野に対しても受け入れる姿勢であり、また知識吸収に貪欲です。積極的に情報を収集し、社内にも共有してくれます。新しいツールも自分で作成し、情報共有や効率化を成し遂げています。

どうして違いが出るのか

それでは、これらの違いは一体何から生じるのでしょうか? 一般的には、個々人の成長意欲の差に起因すると感じられることが多いでしょう。しかし、これは全体像の一部に過ぎません。限界値を設ける人の根底には次のような恐怖があるのはご存知でしょうか。それは、仕事量が増えていくことに対して、結果として無限に忙しくなるというマイナスのイメージが強まるのです。勝手な想像がネガティブ想像になっているのです。そのため、自分自身に限界値を設定することの方が心地良いと感じるのです。なぜなら、今以上に忙しくなることはないからです。

それは本当に理想なのでしょうか。真実なのでしょうか。あるべき姿として、限界値を超える仕事量が来たとき、どう対処すべきなのでしょうか。その答えは、時間配分の優先順位を再評価することにあるかもしれません。

答えは無限に働くことではない

優先順位を見直し、無駄な時間を削ることで新たな時間を生み出すことができます。目的もなく、習慣的にやっていることや、無意味に情報を漁っている時間などは、その最たる例といえるでしょう。無限に時間を延長して働くことが正解ではありません。むしろ不正解です。改善によって時間内で終わらせることです。

こうした視点から行動を見つめ直すことは、成長の過程でもあると思います。しかし、実際には自己の成長に対して否定的な感情を抱いている人がいます。特にリーダーの中には、チームメンバーには成長を求める一方で、自分自身には限界を設定してしまう人がいるのです。言動不一致です。これではチーム運営も成立しません。組織化も遠いでしょう。

心理面から見れば

人が自己の限界値を設定する行動は、心理面からも説明が可能です。主な考え方としては、認知的不協和理論、固定思考と成長思考などが挙げられます。

  1. 認知的不協和理論
    レオン・フェスティンガーによって提唱されたこの理論は、人々が自己の信念や行動が矛盾している状態、つまり「不協和」を感じると、それを解消するための行動を取るというものです。例えば、自分が限界を超えると信じている人が、その限界を超えるための行動を求められたとき、不協和が生じます。その不協和を解消するために、限界を設けるかもしれませんし、「わたしにはできない」「その役割ではない」「若い人が担当だ」と決めつけることもあります。
  2. 固定思考と成長思考
    心理学者キャロル・デュエックによって提唱されたこの理論は、人々が自己の能力や才能を固定的(変わらない)と見るか、成長可能(向上可能)と見るかによって行動が変わると説明しています。固定思考の人は、新しい挑戦や困難な課題から避ける傾向があり、これが自分の限界を設定する行動につながることがあります。

以上の理論からもわかるように、人々が自己の限界を設定する理由は個々の経験や信念、感情によって大きく左右されているのです。

まとめ

限界値を設ける傾向は、時代の流れ、特にデジタル化やAIの普及に対する抵抗感からくるものでしょう。その結果として、時代の流れについていけない人々が淘汰されることになると感じています。残念ながら、これは避けることができない現実なのかもしれません。全員で乗り越えていきたい領域です。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆