現金保有に熱心の真意

日本企業の現金保有に関するデータを見ると、事実が浮かび上がります。手元資金から有利子負債を引いたネットキャッシュがプラスで、欧米企業の2割よりも大幅に高い水準にあるのです。このデータだけを見ると、日本企業は投資を控える姿勢を持っていると解釈されるかもしれません。しかし、その背後には、日本独特の経営哲学や経験が隠されていると感じています。

現金保有の背後にあること

日本企業の多くは、リーマンショックのような大きな経済危機を経験しています。その際、多くの企業が資金繰りに苦しんだ経験から、現金保有は企業の生命線として考えています。経営においては、常に外部からの助けを期待することはできません。そのため、自らの手でリスクを管理し、未来の不確実性に備える必要があるからです。このような背景から、日本企業は現金を保有することを重視していると思うのです。

また、日本国内においては、大型投資の必要性が低いという現状もあります。これは、成熟した市場や人口減少などの要因により、新しい大規模な事業展開の機会が限られてしまいました。残念ながら資金を持っていても投資する先がないのも現状としてあるのです。

現金保有に熱心な日本企業
手元資金から有利子負債を引いたネットキャッシュがプラスで、欧米企業の2割よりも大幅に高い水準です

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD195R90Z10C23A7000000/

グローバル化からのシフト

最近は、多くの企業が海外進出のリスクを感じていることは否めません。経済の変動、政治的な不安定性、文化的な違いなど、海外でのビジネス展開には多くの課題が伴います。特に、国内回帰の動きが強まる中で、海外への進出を選択する企業は減少傾向になっています。これも流行りがあるので、また動きは変わるとは思います。

国内回帰の背景

国内回帰の背景には、複数の要因が考えられます。まず、国際的な緊張や経済の不安定性が高まる中、企業は自国の市場を再評価し、安定したビジネス環境を求めるようになっています。また、国際的なサプライチェーンが断絶するリスクが浮き彫りになったことも、国内回帰の動きを後押ししています。他にも、思ったより海外進出によって収益が出なかったということもあるでしょう。規模がともなわない海外進出は厳しい現実があるのではないでしょうか。

グローバル化からローカル化へ

これまでのビジネスのトレンドとして、グローバル化がキーワードとして挙げられてきました。しかし、現在はその流れが変わりつつあり、ローカル化の動きが強まってきます。これは、日本だけでなく、世界中でのトレンドとして個人的にはとらえています。

ローカル化のメリットとして、地域特有のニーズに応えやすい、サプライチェーンの短縮やリスクの低減、地域社会との連携強化などが挙げられます。企業はより柔軟かつ迅速に市場の変化に対応することが可能となり経営の存続可能性が高くなります。

まとめ

日本企業の現金保有に対する姿勢を単純に「投資をしない」と評価するのは短絡的です。現金保有は、経営の安定やリスク管理の観点から非常に重要な役割を果たしていると感じます。そのため、現金保有に「熱心」という表現は、実態を正確にとらえていないかもしれません。日本企業の経営哲学や背景を理解すればわかると思います。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆