円の実質実効為替レート

円の対ドルレートやその他の主要通貨に対する為替レートは、日本の経済の対外的な健全性を示す重要な指標となっています。しかし、これらの為替レートだけでなく、「実質実効為替レート」という指標もまた、国の競争力や経済の背景を理解する上で参考になる指標です。今回は実質実効為替レートについて取り上げます。

実質実効為替レートとは?

実質実効為替レートは、複数の国との相対的な価格やコストの変動を反映した為替レートの指標です。「通貨の実力」や「内外の物価格差を考慮した円の実質的な価値」と説明されることもあります。この指標を用いることで、単なる為替レートでは見えない、貿易競争力の変動や経済の健全性を詳しく知ることができます。

50年の歴史を振り返って

1995年1月を基準100とした場合、2022年4月時点で実質実効為替レートは60.91に落ち込んでいました。これは約50年前の1971年8月の58.41という数値に非常に近づいています。この1971年という年はいくつもイベントが発生した年です。1971年8月といえば、アメリカ大統領リチャード・ニクソンが一連の経済政策、通称「ニクソンショック」を打ち出し、それに伴い、1ドル=360円の固定相場制から変動相場制への移行が始まった時期でもあります。簡単な比較はできませんが、1ドル360円のときと同じ実質実効為替レートであることが、ある意味衝撃だと言う人もおり、円の弱さが数値で表現されてしまったようです。

この歴史的背景を踏まえると、日本円の実質的な価値が50年ぶりの安さになっているという事実があります。しかし、この事実を知っている人、そしてその意味するところを正確に理解している人は、実際には少ないのではないのかもしれません。それほど、円の弱さが感じられるできごとがまだ発生していないからです。為替が動けば実感することになるでしょう。

インフレへの警戒

通貨の実質的価値が低下すると、輸入品の価格が上昇する傾向にあり、これが国内の物価上昇を引き起こす可能性が高まります。したがって、円の実質実効為替レートが50年ぶりの低水準にある現在、日本の経済におけるインフレのリスクは増大しているのではないでしょうか。こうしたシナリオを予想しておくのが今の時期だと感じます。そうならなければいいのですが、そうなってしまったら、という想定で考えておかなければなりません。

まとめ

実質実効為替レートの動向は、経済の健全性や今後の展望を理解するための重要な指標となります。そのため、この指標をしっかりと把握し、適切な施策の選択や対策を講じるサインとなるのではないでしょうか。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆