準備は揃わない

ビジネスをしていて、条件がすべて揃うことはほとんどありません。何かが欠けていたり、制約があったりするものです。また、リスクも事前にゼロになることもなく、未確定な部分を残しながら決断することになります。そんな経営者的思考を見抜く設問があります。

設問

次の質問を考えてみてください。

  • 「新しい事業を立ち上げる際の手順について聞きます。あなたはどちらのタイプですか?」

A「事業のコンセプトや目標を決めて、必要な資金や人材、技術などのリソースを調達する」
B「自社の既存の資源や人財を確認しながら、それを活用してどんな事業がどこまで可能かを考える」

どちらもアプローチが違いますが、正解です。ただ、新規で事業をスタートさせるときに適任なリーダーはBになります。必要な環境や条件から考えるのではなく、現状の環境や資源からビジネスをスタートさせる発想です。

Aの場合、条件が揃わないときに言い訳をするリーダーになることがあります。環境が揃っていないから到達しない、人が集まらなかったから目標達成しなかった、といった言い訳です。これでは新規事業は立ち上がりません。

また、大手の企業から中小企業に転職してくる人も同様な傾向にあります。「もし環境が揃えばこれだけの成果を出せます」と言い続けている感じでしょうか。このような人は何度も出会ってきましたが、結局のところ条件が揃わないときには何もできないケースばかりでした。なので、新規を立ち上げる実力は、不完全な環境下で事業を進められる人のことだと実感しています。

目標主導と手段主導

上記を2つのタイプに分類すると次のような内容に分けられます。

  • 目標達成のために外部からリソースを調達する:目標主導型(goal-driven)
  • 自社の強みや既存の資源を最大限に活用する:手段主導型(means-driven)」

資金的に余裕があるときは目標主導を選択すると思います。別にわるいとは思いませんが、資金はいくらあっても新規事業をするときには不足するものです。結果が出ないときほど資金不足を感じます。最初に準備するお金が多くなると成功率は高まりますが、絶対に成功するわけではありません。そのため、目標主導型を選択し、資金を投資しても結局は理想に到達しないことが出てくるのはそのためです。

何ができるのか、から考える

新規ビジネスのために「何が必要か」を考えることも大切ですが、もう一方では「今の現状で何が最大限にできるか」に焦点を当てることも知っておきたいところです。業績が下降するとき挽回を考えますが、そのときに追加投資できないことの方が多く、「何が必要なのか」「何が不足なのか」を考えるより「何ができるのか」にフォーカスして戦略を考えたいのです。

  • 自社の強みや既存の資源を最大限に活用したらどこまで到達するのか
  • 柔軟な発想で、自社の強みを活かせる事業機会を探せないのか

「何が不足なのか」よりも「今、自分たちには何ができるか、そして最大限に実力を発揮するには」に焦点を当てることが、イノベーティブな事業を生み出すポイントとなるでしょう。

まとめ

不足の状態、制約条件ばかりの中、企業経営をしなければならないときがあります。このときほど柔軟な発想を用いて、既存資源だけで最大限の結果を求めていくことになります。条件が揃った状態はいつになっても来ないと感じます。違う言い方をすれば、厳しい条件だからこそ実力が発揮できると考えています。真の実力はどのような条件下でも結果を残すことです。

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