解約妨害
米国のソフトウェアカンパニーであるアドビが顧客に不当な請求を行い、サブスクリプションの解約を妨害したと米連邦取引委員会(FTC)はアドビを提訴しました。問題となっているのは、アドビの「年間契約、月払い」プラン(サブスクプラン)です。FTCによると、アドビは以下のような行為により、消費者を欺いていたとのことです。
- 年間契約の自動更新について、重要事項を目立つように開示していない
- 解約方法を分かりにくくし、解約を遅延させようとした
- 解約手続きを行おうとしても、担当者たらい回しを行い遅延させた
以前の話になりますが、これと同じ体験をしたことがあります。あまり利用しないアドビ製品の解約を試みたのですが、電話はなかなかつながらない。結局数回チャレンジして、その日はあきらめたことがあります。そのとき、なぜつながらないのか理由がわかりませんでしたが、後になって仕組みがわかったのです。
なぜ、解約妨害が発生するのか
企業にとって、解約を妨害することは顧客に不満を残したり、ブランドが毀損する可能性も高くなります。マイナスなことだと思うのですが、なぜ解約妨害が発生するのでしょうか。
これは原因が明確にあります。解約の連絡が来ると担当者が応対するのですが、その担当者の評価指標が
・解約率を下げること
なのです。KPIが解約率という%だけしかないのです。そうなると、途中のプロセスは評価に関係ありません。そのため何をしてでも解約率を下げる仕組みを考えてしまうのです。
評価制度の欠陥といっていいでしょう。このような評価指標だから、プロセスを無視して、解約妨害という解約率減少が発生してしまうのです。アドビはソフトウェアを以前は販売していました。買い切りだったのです。それが現在はサブスクプランしかありません。サブスクへの移行がうまくいった企業事例として取り上げられています。サブスクの場合、解約率(チャーンレート)が企業の収益を左右します。そのため、解約率は経営の優先事項となっているのは事実です。しかし、ブランドを毀損させてまで解約率を下げる企業姿勢はどうかと思います。
解約おめでとう事例
格安スマホ・格安SIMのサービスのmineoは、解約すると「卒業おめでとう!」と表示されます。卒業証書がもらえるのです。これは解約時の精神的負担を減らす効果があります。ユーザーは解約するとき後ろめたさもあり、マイナスなことをしている気分にもなります。それを卒業おめでとうと言って後ろめたさを消滅させているのです。とてもユニークな取り組みです。ブランドが毀損するどころか、ブランド価値が向上している事例です。
まとめ
ユーザーの解約という行為に対する企業応対によって、天と地の差ができるのがアドビとmineoの事例からよくわかります。目先の業績を追ってしまうとブランド毀損してしまうので経営としては注意したいプロセスです。またKPIの設定もプロセスのKPI設定をしなければ暴走することもあるので重要なポイントだと実感しています。
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