IR情報から
企業を評価判断する機会があります。取引をするときや、顧客の対象となる場合です。学生さんだと就職先の選定をするときに企業を評価する必要に迫られます。しかし、企業をどのように判断すればいいのか、明確な基準はありません。ましてや、将来性については不明瞭であり、何を選んで良いのかわからない世界です。そんな中、企業を評価する手法の初歩として、企業のIR(Investor Relations)情報を用いるプロセスを今回は取り上げます。IRは非常に有用なリソースとなるはずです。
(本格的に企業評価を学びたい方はこちらがおすすめです)
1. 企業の成長性
まずは企業の成長性に注目。以下の点を確認することで、その企業が将来性のある企業かどうかを判断できます。
- 売上高・利益の推移:過去数年間の傾向を見ることで、企業の勢いがわかります。ただ売上の中身も見て判断したい。売上が急成長しているのに、売掛金も同じように増加している場合は本当の売上なのか未確定だからです
- 中長期的な成長戦略:将来のビジョンと具体的な計画を確認したい。過去の計画も振り返って計画達成の割合も見て判断したい
- 新規事業や海外展開の状況:新たな挑戦は、企業の活力を示す良い指標。研究開発の場合もあれば、新規事業や新規出店の場合もあります。本当に主軸となる事業を生み出そうとしているのか資料から判断したいところです
2. 財務の健全性
安定した企業で働くためには、財務状況の確認も欠かせません。取り引きをする場合は相手の財務状況は確認必須。相手が財務的に逼迫している場合には、取り引きするのをストップすべきであり、共同でビジネスをしないほうがベターです。
- 自己資本比率:高いほど、財務基盤が安定しています。30%を目指せと言われています
- 有利子負債の状況:過度の借入金は要注意。ただ借入額が多いだけで判断できない部分もあります
- キャッシュフローの状態:実際の資金繰りの健全性を示します。現金はウソをつけません。キャッシュの動きが実態を表していると言われているのです
3. 人材育成・働き方改革
企業成長はスタッフの成長と連動します。関連性が高いです。企業の人財育成投資はその企業の将来を決めてしまうのです。
- 教育研修制度:スタッフの成長をサポートする体制が整っているのか。最近では人財への投資金額を明示する企業も出てきています。それほど企業経営にとって重要な指標となりつつあります
- ワークライフバランスの推進:働きやすい環境であるか確認したい。働きやすさの中に会社への安心感が湧き出て、スタッフは実力を発揮するという流れがあるからです。働きやすさの先にスタッフ能力の開花が待っているのです
4. 企業文化・経営理念
企業の価値観が合っているかどうかも、長期的なつながりを考える上では大切なポイント。価値観、文化、風土、空気がフィットしなければ取引もお付き合いも長続きしません。
- 経営者メッセージ:トップの考え方や姿勢から、企業の方向性がわかります。トップの人の顔写真が出ているかもポイントになります
- 企業のミッション・ビジョン:ビジョンが明確であり、理解できること。そしてビジョンに共感できるかは見ておきたい
5. イノベーションへ
企業の革新性は最先端への興味や取り組みによって判断できます。新しいことを取り入れる企業ほど業績は良いことはデータから導き出されています。考えてみればわかりますが、時代が動いているのに変わらない会社は異常なのです。
- 研究開発費の推移:新しいものを生み出す力を持っているか、もしくはそこに注力する企業かどうかがわかります
- 新技術・新製品の開発状況:人とお金を投資しているのか。長期的な投資をしているかも見ておきたいところです
- デジタル化やDX、AIへの対応:新しいツールの導入は企業を写す鏡です。ツールの導入度や稼働率は知りたいところです
まとめ
IR情報を読み解くことで、企業の実態をより深く理解することができます。読み慣れてくると楽しい資料だと感じます。そこに企業の過去と未来が詰まっているからです。ときには、苦労したプロセスが想像できることもあり、企業経営のリアルな現場を推測できるのです。ゆくゆくは、IR情報から、企業の成長性を正確に予想することができるでしょう。それはそれで、楽しい作業だと感じます。
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