9年前から

今から9年前の論考。日銀の国債買入れオペの限界について心配している内容です。書いたのは当時東大教授の植田和男氏。現在の日銀総裁です。当時日銀が買い入れた国債の額(保有額)は280兆円で当時のGDPの50%。その時点で金利上昇時の国債価値下落の心配をされています。含み損が出るからです。2%上昇で債券価格は13%下落、3%上昇すれば18%の下落。債務超過になってしまうことも心配されています。当時からわかっていたのです。現在の国債買入れ額(保有額)は580兆円まで膨らんでいます。当時の2倍!。現在の心配はさらに大きくなっているのではないでしょうか。

近づく国債買いオペの限界2015年 植田和男(東京大学教授)

  • 日本銀行による国債買入れオペレーションには限界点が近づいている
  • 金利上昇時に、日銀が購入した国債に含み損が発生する可能性がある
  • 日銀のバランスシート上の国債保有比率が高くなりすぎており、リスクが高まっている
  • 金融政策の正常化に向けて、日銀は国債買入れを徐々に減らしていく必要がある
  • しかし、急激な金利上昇を避けるため、国債買入れの縮小は慎重に進める必要がある

わかっているので

日銀総裁になってからは、国債買入れオペの限界については言及されていません。立場がちがうので述べることはないでしょう。しかし、9年前から限界を悟っているので、健全な形に戻したいという気持ちは強いのではないでしょか。それが自分の役割だと感じていると思います。しかし、政策金利アップと国債買入れオペの額縮小という7月末決定の市場反応は予想より大きかった。そのため、次の手が出せない状況になっているのは事実です。英国で失敗した事例を思い出しますが、そこまでひどい失敗には今のところ至っていません。ただ、次の手が出せなくなると選択肢がなくなるので、厳しい状況になる可能性が高くなっているのです。

まとめ

9年前の論考の中にも、日銀が債務超過になったとき政府から資本注入があれば問題は起こらないと書いてあります。しかし、実際にそうなるかはわかりません。日銀は、国債買入れオペも限界を超えていますし、他の中央銀行が行わない間接的な株式購入(ETF購入)を行ってきました。壮大なる実験を先頭に立って行っている状態です。毎年、打てる策が少なくならないようにしてもらいたいと思っていますが、現在のところ、選択肢が減っているようにしか感じません。今後も目が離せないところです。

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